[CAF]戦略と計画テンプレートを使ってみる ~戦略編~ ①

はじめに

CAFにおける戦略、計画を検討する際に役立つツールとして 戦略と計画テンプレート が提供されています。このテンプレートにはクラウド導入の戦略・計画の検討結果を記録するために利用するものです。また今後プロジェクトを進めて行く際にテンプレートは各関係者と意思統一を図る目的でも利用されます。
今回は事例をベースにこのテンプレートを埋めてみることで、戦略と計画の策定において考えなければいけないことは何か?何を答えとするべきか?答えを出すためどんなアプローチを取ればよいか?といったことを検討していきたいと思います。

本記事では戦略と計画テンプレートのうち、戦略についてのみ記載します。計画については今後別の記事にまとめる予定です。
CAFの戦略と計画に関しては別の記事にもまとめていますので併せてご参照ください。
Cloud Adoption Framework 戦略の概要
Cloud Adoption Framework 計画の概要

取り上げる事例について

事例として取り上げるのは弊社でも比較的実績が多い”オンプレミス仮想環境の更改”にします。オンプレミス仮想環境は私が2017年当時実際に働いていた場所で運用していたシステムを例にします。
当時は毎朝会社に出社し、自席についてからシンクライアント端末を起動して仮想環境に接続した上で業務を行っておりました。環境はあまり従業員には優しくなく、次のような問題点を抱えていました。

  • 社内ネットワークからのみ仮想マシンに接続できる
  • 仮想マシンのスペックが低くく業務に支障をきたす(Office多重起動するだけで重い)
  • 毎朝アクセス集中が発生(利用者が多いこととフレックスではく始業と就業時刻が固定されているため)

今回はオンプレミス仮想環境をリプレースするプロジェクト担当に任命され、戦略を検討することになったシナリオを交えながら記載していきます。

戦略と計画テンプレートの内容

Wordファイルであるテンプレートをダウンロードして開くと、次の項目が記載されています。今のところ英語版しかないため、左に原文を記載して右に翻訳を記載します。

1.Executive Summary1.クラウド導入計画の概要
2.Define Strategy
 2-1.Motivations and drivers
 2-2.Business outcomes
 2-3.Business justification
 2-4.First adoption project
 2-5.Key stakeholders
2.戦略の定義
 2-1.動機、推進要因
 2-2.ビジネス成果
 2-3.ビジネスの妥当性
 2-4.最初に採用するプロジェクト
 2-5.重要なステークホルダー
3.Plan
 3-1.Digital estate
 3-2.Organizational alignment
 3-3.Skills readiness plans
 3-4.Cloud Adoption Plan
3.計画
 3-1.デジタル資産
 3-2.組織の調整
 3-3.スキル準備計画
 3-4.クラウド導入計画
戦略と計画テンプレート から目次のみ抜粋

続いてそれぞれの項目に記載するべき内容の説明と、今回の事例に沿って実際に内容を検討していきます。
本記事では 2.戦略の定義 のうち 2-1.動機、推進要因、2-2.ビジネス成果 についてを記載しおります。
2-3.ビジネスの妥当性、2-4.最初に採用するプロジェクト、2-5.重要なステークホルダー については次回の記事にて記載予定です。
また 1.クラウド導入計画の概要 は総括的な内容になると考えられるため、この記事では記載していません。

動機、推進要因

テンプレート内では次のように記載されています。

なぜクラウドを採用したいのですか? 意思決定を推進する重要なビジネスイベントはありますか? 具体的なビジネスの動機はありますか?

ここではクラウドを採用する動機とその理由を明らかにしていきます。過去の記事で動機は ①重要なビジネスイベント ②移行 ③イノベーション の3つに分類されると案内しました。テンプレートのリンク先は動機に関する記事となっております。


オンプレミス仮想環境の構成を調査したり、運用担当者に動機の3つの分類および例を説明した上でヒアリングを行いました。するとこの環境は導入からそろそろ5年経過しそうで、入れ替えを検討する時期にあることが分かりました。
この環境は数台の物理サーバーをハイパーバイザーとして仮想マシンを稼働させています。物理サーバーは固定資産であったため、減価償却を行う必要があります。固定資産は国税庁により耐用年数が定められており、サーバーの場合は5年となります。
よって今回は”重要なビジネスイベント”がありそれが一番の動機となります。

また運用担当者へのヒアリングを通じて、リモートアクセスやスケールイン・アウトの需要があることやメンテナンスなどの運用負荷が高いことが分かりました。これはクラウドを採用する理由となります。

ビジネス成果

テンプレート内では次のように記載されています。

クラウドを採用して期待されるビジネス成果は何ですか? それを以下の対応表にまとめ、優先順位ごとに整理してください。

対応表に記載されている各項目は以下の通りです。

  • 優先順位:高、中、低 それぞれ記載するようになっています。優先度は他の項目をすべて埋めてみた上でなければ判断できませんので、最終的に決定することとなるでしょう。
  • ステークホルダー:利害関係者は誰かを記載します。今回の例でいえばオンプレミス仮想化環境の利用者を一番に記載し、利用者がそのシステムを利用していくために関わりのある関係者を記載していきます。
  • 成果:何を成果とするかを記載します。クラウドを導入することは成果とはなりません。クラウドを導入することで得たい成果を記載します。公式ドキュメントのビジネス成果から選択するのがスムーズでしょう。
  • ビジネス推進者:推進者は誰かを記載します。プロジェクトの中心となり推進するのはCCoEの役割になると考えられますが、ここでは指定したステークホルダーの中で推進に携わってくれるのは具体的にどういった人か?という解釈とします。
  • KPI:成功と判断するための指標を記載します。例えば収益が何%増加するか、運用コスト・資本支出(固定資産)が何%削減できるかといったものとなります。併せてその要因が何かを検討することも必要です。
  • 必要な機能:成果を達成するために必要な機能は何かを記載します。これは特定のソリューションや技術的な機能を成果にマッピングさせるために必要です。
優先順位ステークホルダー成果ビジネス推進者(一覧)KPI(一覧)必要な機能(一覧)
利用者パフォーマンスの向上・利用者への説明責任のある各部門の代表者
・仕様に対する決定権を持つ人
・パフォーマンスXX%向上
・同時利用者数XX名
・スケールイン、アウト
・リモートアクセス
運用担当運用負荷の軽減・運用業務を実施している人
・業務の改善を推進する部門の所属する人
・運用業務負荷のXX%軽減・オートスケール
・リモートアクセス(管理)
財務担当コストの削減・コストに対して責任を持つ人
・資産を管理している部門に所属する人
・運用コストのXX%削減・コストの可視化
・将来のコストの予測
戦略と計画テンプレート からビジネス成果を記載する表を一部形式を変更し抜粋


優先度 高

今回のシステムは社内の業務を行うための基盤であるため、利用者への影響が一番大きいと考えました。もともと利用者からは複数の問題が挙がっていたため、その問題を改善することが成果であると考えられます。
利用者への影響が大きい以上、プロジェクトを円滑に推進するためには利用者にメリットを理解してもらい見方についてもらう必要があります。そのためには利用者を代表する人物の協力を得る必要があるでしょう。クラウド導入により見込める成果や変更となる仕様について理解してもらい、他の利用者に説明を行い説得してもらいたいと考えます。
環境に依存する要因で利用者が求めるパフォーマンスを仮想マシンが発揮することができず、業務に支障をきたしている状態でした。パフォーマンスの向上を数値化できればこれが指標となります(パフォーマンスをどうやって指標化するのか、これはまた別途考える必要があります)。
またサインインインストームなど同時利用者数の一時的な増加も問題でしたので、許容できる同時利用者数も指標となります。
このような成果を達成するために必要な機能は、必要に応じてVMをスケールインまたはスケールアウトできることとなります。また社内ネットワークから利用ができないことでパフォーマンスの低下を招いていると判断される場合には、インターネット経由でVMにアクセスできる機能も必要です。

優先度 中

システム基盤が大きく変わるため、運用担当者への影響もかなり大きくなります。ただしクラウドを導入することで多くのメリットも得られるようになります。オンプレミス基盤であることでクラウドに比べて運用負荷が高くなることは周知の事実なのでここでは省略します。
普段運用業務を担当している方への協力が必要なのはもちろんですが、無駄がある業務を改善することをミッションとしている組織の人物への協力も必要となるでしょう。
クラウド導入によりシステムを継続するために必要な運用業務に費やしている時間が度くらい削減されたか、それが指標となります。
これまで担当者が行っていた業務を自動化できれば負荷の軽減につながります。またもしも社内ネットワークからしか管理ができないことが負荷に繋がっていた場合には、リモートアクセスも有効と考えられます。

優先度 低

オンプレミスからクラウドに変わることで資産の管理方法が変わります。ここに記載している財務部門とはシステムの運用にかかるコストを管理しているところと考えてください(会計に詳しいわけではないためご容赦ください・・・)。
総保有コスト計算ツールで現状のオンプレミス資産にかかっているコストと、料金計算ツールでクラウドに移行した場合のコストを確認したところコスト削減が見込めると判断できた場合、これを成果および指標とすることができるでしょう。
現状のコストを把握している方への協力が必要となると考えられます。
クラウドで発生しているコストが確認できることと、将来発生するコストを予測できることが必要となります。

終わりに

この記事では戦略と計画テンプレートについて、動機 と ビジネス成果 について記載しました。
ビジネスの妥当性、最初に採用するプロジェクト、重要なステークホルダー については次の記事で記載していきます。

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