この記事は更新から24ヶ月以上経過しているため、最新の情報を別途確認することを推奨いたします。
移行目的
Microsoft社から既に発表されておりますとおり、2023/10/10 にWindows Server 2012/2012R2 がEOSとなります。
EOSになると、サポート対象外となってしまうことにより、問い合わせもできなくなりマイクロソフト社のサポートを受けることができなるだけでなく、セキュリティパッチが提供されなくなるため、システムリスクが増大します。
従いまして、Windows Server2012/2012R2をご利用の方は、何らかの対応が必要となります。
移行方法
Windows Server2012/2012R2を移行するにあたり、SaaS/PaaSへの移行や、サードパーティー製のツールを利用した移行もございますが、マイクロソフト社標準機能の範囲でできる下記移行方法が用意されています。
・インプレース
・手動
・移行ツール
それぞれについてメリットデメリットがありますので、下記にまとめました。
移行方法 | 説明 | メリット | デメリット |
インプレースアップグレード | 既存のWindows Server2012/2012R2をアップグレードする。 | 新規にサーバを用意せずにサポートされているWindows Serverへアップグレードできる | Azureでは非推奨となっている H/Wが新しいOSのインストール要件を満たしていないと移行できない |
手動 | 新しいOS/アプリケーションを構築し、データなどを手動でコピーする | 有料ツールなどの費用が圧縮できる | 手間がかかる 抜け漏れが発生するリスクがある |
移行ツール | Windows Serverから別のWindows Serverへデータを移行する。 | Windows Server標準機能のため機能を有効にするだけで利用できる | 移行できるデータが限定される |
Azureではインプレースアップグレードは非推奨であり、手動に関しては人が頑張る以外ないため、
移行ツールによる検証を行い、移行ツールの有用性を確認します。
移行ツールについて
構成
移行元サーバ、移行先サーバの構成となります。
移行先サーバ側が同一バージョンのWindows Serverか新しいバージョンのWindows Serverとなっている必要があります。
機能
下記データの移行が可能です。
移行対象 | 説明 |
ローカルユーザー/ローカルグループ | ローカルのグループを移行することができます。 |
役割と機能 | 一部の役割と機能を移行することができます。 |
IP設定 | IP、NICの設定を移行することができます。 |
ローカルドライブのフォルダ/ファイル | 移行元の共有、フォルダー、ファイル、および関連するアクセス許可と共有プロパティを移行することができます。 |
検証目的
Windows Server 移行ツールの有効性確認
機能と役割及び、ローカルアカウントの移行を検証する。
※ローカルドライブのフォルダ/ファイルの移行についてはRoboCopyによる移行が一般的であるため、今回の検証では検証しない。
移行ツール利用手順
検証環境
移行元サーバ:Windows Server2012R2
役割と機能:DHCPサーバ
ユーザー/グループ:検証用ユーザー/グループ作成
移行先サーバ:Windows Server 2016
ADサーバ:Windows Server 2019
移行元サーバ、移行先サーバともにドメインメンバーサーバ
インストール手順
1.移行先サーバで「Windows Server移行ツール」機能を有効にします
「サーバマネージャー」> 「役割と機能の追加」> 「機能」>「Windows Server移行ツール」>「機能の追加」をクリックし、「インストール」をクリックしてインストールします。
※移行元サーバ側では「Windows Server移行ツール」のインストールは不要です。
2.移行ツールを起動します
「サーバマネージャー」>「ツール」>「Windows Server Mgration Tools」>「Windows Server移行ツール」をクリックします。
3.移行ツールのインストールフォルダへ移動します
cd %Windir%\System32\ServerMigrationTools\
4.移行先サーバに展開フォルダを作成します
下記コマンドを実行すると、指定したアーキテクチャ、OS用の展開フォルダが作成され、移行元のサーバで実行可能なコマンドレットやライブラリが生成されます。
SmigDeploy.exe /package /architecture amd64 /os WS12R2 /path C:\Temp\mgtest
- architectureオプションは、32bit OS場合「X86」、64bit OSの場合「amd64」を指定します。
- osオプションは、Windows Server 2012の場合「WS12」を指定します。上のコマンドはWindows Server 2012 R2を指定しています。
- pathオプションは、展開フォルダを保存する場所を指定します。今回はC:\Temp\mgtestを指定しています。
5.作成した展開フォルダを移行元サーバへコピーします
コマンド実行後、指定したpath下に「SMT_WS12R2_amd64」フォルダが作成されますので、
作成されたフォルダを移行元サーバの任意の場所へコピーします。(今回は C:\Temp\ にコピーしました)
RDP経由でコピーでも、共有フォルダを作成してコピーでも構いません。
※今回は移行元サーバ上で共有フォルダを作成し移行先サーバからコピーしました。
移行手順
※今回は、役割と機能でDHCPサーバの移行とローカルユーザー/グループの移行の手順を記載しています。
設定エクスポート
1.移行元サーバでコピーした展開フォルダへ移動します
コマンドプロンプトを管理者権限で起動します。
2.移行元サーバで移行先サーバからコピーした展開フォルダに移動します
cd C:\Temp\SMT_WS12R2_amd64
3.移行元サーバで移行ツールの登録を行います .\Smigdeploy.exe
登録が完了すると、登録が正常に完了したことを示すステータスメッセージが表示されます。
4.PowerShellを管理者権限で起動します
「スタートメニュー」>「PowerShell」を右クリックし、管理者として実行をクリックします。
5.移行ツールをPowerShellに読み込みます
Add-PSSnapin Microsoft.Windows.ServerManager.Migration
6.移行元サーバで移行先サーバからコピーした展開フォルダに移動します
cd C:\Temp\SMT_WS12R2_amd64
7.移行元サーバ上のDHCP・ユーザー/グループ、IP設定をまとめてエクスポートします
DHCPサーバの移行の場合、サービス実行ユーザーとグループ、IP設定を一緒にエクスポートしないとエラーとなったため1コマンドでまとめて実行します。
Export-SmigServerSetting -featureID DHCP -User All -Group -IPConfig -path C:\Temp\mgtest_export-DHCP -Verbose
コマンドを実行するとファイルに設定するパスワード入力を求められます。
コマンド パイプライン位置 1 のコマンドレット Export-SmigServerSetting
次のパラメーターに値を指定してください:
Password: ************ ←パスワードを入力します
以下のように「Success」欄が「True」になっていれば成功となります。
ItemType ID Success DetailsList ——– — ——- ———– WindowsFeature DHCP True {} OSSetting Local User True {} OSSetting Local Group True {} OSSetting IP Configuration for Ethernet Adapters True {IP Configuration for Ethernet Adapters} OSSetting Global IP Configuration True {Global IP Configuration} |
コマンド解説
Export-SmigServerSettingコマンド:移行元の設定をエクスポートするコマンドです。
-featureID 役割と機能のIDを指定します。(注1)
-User ローカルユーザーをエクスポートする場合に指定ます。All パラメータは登録されている全ローカルユーザーが対象となります。
-Group ローカルグループをエクスポートする場合に指定します。
-IPConfig ネットワーク設定をエクスポートする場合に指定します。
-path エクスポートされたファイルを配置するフォルダを指定します。
-Verbose コマンド実行処理の詳細が出力されます。
注1:移行できる「役割と機能」の一覧は下記コマンドで確認可能です。
移行可能な「役割と機能」のみ出力されます。
Get-SmigServerFeature
実行結果例:
WindowsFeatureName ID Installed
—————— — ———
DHCP Server DHCP True
BranchCache True
WoW64 Support WoW64-Support True
設定インポート
8.移行先サーバでPowerShellを管理者権限で起動します
9.移行ツールをPowerShellに読み込みます
Add-PSSnapin Microsoft.Windows.ServerManager.Migration
10.移行先サーバで設定をインポートします
DHCPサーバ機能、ローカルユーザー/グループを移行します。
Import-SmigServerSetting -FeatureID 'DHCP' -User All -Group -Path '\\10.0.0.4\Temp\mgtest_export-DHCP' -Verbose
移行ファイルのパスワードを求められるので、エクスポートした際に設定したパスワードを入力します。
cmdlet Import-SmigServerSetting at command pipeline position 1
Supply values for the following parameters:
Password: ************
以下のように「Success」欄が「True」になっていれば成功となります。
ItemType ID Success DetailsList
——– — ——- ———–
WindowsFeatureInstallation DHCP True {}
OSSetting Local User True {Local User, Local User, Local User, Local User…}
OSSetting Local Group True {Local Group, Local Group, Local Group, Local Group…}
11.ユーザー/グループの確認
「管理ツール」>「コンピューターの管理」>「ローカルユーザーとグループ」を開く
ユーザー/グループともに移行できているか確認する。
移行されたローカルユーザーアカウントは「無効」となっており、パスワードもリセットされているため、アカウントの無効化解除ならびにパスワードの設定を実施します。
なお、移行先に既に存在するローカルユーザー/グループは処理がスキップされるため設定が上書きされません。
12.DHCPサーバの構成設定
「サーバマネージャー」>「通知」に「!」が表示されているので、クリックする。
「展開後構成」内、「DHCP構成を完了する」をクリックすると、「DHCP構成後のウィザード」が表示されます。
「説明」欄で「次へ」をクリックし、承認欄でドメイン参加しているサーバはドメインアカウントを入力します。
ドメイン不参加のサーバはローカルアカウントのラジオボタンを選択し、「コミット」をクリックします。
セキュリティグループの作成と、DHCPサーバの承認が完了となっていることを確認します。
13.DHCPサーバの確認
「管理ツール」>「サービス」でdhcpサーバが起動していることを確認します。
「サーバーマネージャー」>「ツール」>「DHCP」をクリックし、DHCPの設定が引き継がれていることを確認します。
まとめ
Windows Server 2012/2012R2のEOS対応の一例として紹介させていただきました。
役割と機能、ローカルアカウントの移行は比較的安易に移行することが可能となります。
企業のEnterprise環境でのリスクとなりますので、Windows2012/2012R2からのリプレースをご検討いただければ幸いです。