AVDのスケーリングプランにおける除外設定の検証

はじめに

Azure Virtual Desktopのスケーリングプランを使用する機会が有った為、その中でも特に気になって点としてAVDのスケーリングプランに関する除外タグ設定の検証についてまとめたいと思います。除外タグ設定とは具体的にはセッションホストの一部をスケーリングプランによるオートスケールから除外することができる設定です。具体的にAzure Portalでみるとスケーリングプランの以下箇所に設定値がございます。

除外タグを設定する方法といった基本的な事から、除外タグの設定が適用されると思われるタイミングなど今回気になり検証した結果を記載していきたいと思います。

前提条件

AVDの環境やスケーリングプランの除外タグ以外の各種設定がされていることを前提として以下の記事を記載していきますのでご了承下さい。また、AVDのスケーリングプランに関する各種用語についても理解している前提で記事を書き進めていきます。

除外タグの設定方法

Azureで使用するタグには厳密には以下のようにタグの名前とタグの値の二つの設定値が有ります。しかしAzure Portal上のスケーリングプランの除外タグ設定の箇所の説明だけではタグの名前と値のどちらを設定すればいいのかよくわかりません。ここでは結論として、タグの名前を設定する必要が有ります。サンプルとしてvmというタグの名前を指定します。

検証概要

除外タグの機能を把握したうえで特に確認してみたいと思った点は、VMに付与したタグを削除した際に即座にこの設定が機能するのか、それともタイムラグがあるのかという点です。そこで以下の観点で検証をしてみました。
①停止中のセッションホストの除外タグを削除した場合に、即時起動するのか?
②起動中のセッションホストに除外タグを削除した場合に、即時停止するのか?

①,②それぞれ補足します。

①について
通常ランプアップの時間にオートスケールにてセッションホストの起動台数が増えていくと考えられますが、この際に事前に除外タグを設定してあるセッションホストは起動せずに停止状態のままとなるはずです。とはいえ起動済みのセッションホストでは台数が足りなくなりランプアップあるいはピーク時の間にこのセッションホストの除外設定を解除してユーザーの接続を受け入れたいと考えることが有ると思います。その際、単純にタグを削除すればすぐに起動してくるのか、それともすぐには起動しないのかといったところを検証で明らかにしたいと思いました。

②について
通常ランプダウンの時間にオートスケールにてセッションホストの起動台数が減っていくと考えられますが、この際に事前に除外タグを設定してあるセッションホストは停止せずに起動状態のままとなるはずです。しかしその後利用ユーザーが減少して起動させておく必要がなくなり除外設定を解除してセッションホストを停止したいと考えることが有ると思います。その際、単純にタグを削除すればすぐに停止するのか、それともすぐには起動しないのかといったところを検証で明らかにしたいと思いました。

検証環境概要

今回以下のような検証環境を用意して検証を実施しました。
・マルチセッション用のホストプールを一つ作成
・ホストプール内に4台のセッションホストVMを作成
・セッションホスト1台当たりのセッション上限は2とする。

検証①

以下の条件にて検証を実施しました。

事前準備

①ランプアップ時の容量しきい値は60%に設定
②ランプアップ時のホストの最小割合は25%に設定
③4台中3台のVMについて除外タグを設定
④2ユーザーでAVDに接続

②、③により4台のセッションホストのうちタグが設定されていない1台のみが起動している状態となります。また④により1台に2ユーザーが接続している状態となります。①にて容量しきい値を60%としているので、除外タグの設定が無ければ2ユーザーが接続したタイミングで2台目のセッションホストが起動するはずですが、今回は除外設定がされているため2台目は起動せず3ユーザー名以降は接続できない状態となります。

タグ設定の変更

この状態で3台のVMに設定されているタグを外してみます。すでに容量しきい値の60%を超えている環境なのでタグを外したらすぐにでも起動してほしいところですが、実際に試してみるとVMは起動しませんでした。以下の通り状況は変わらずでした。

その後いろいろと試してみたところ、一度1ユーザをログオフさせて再度ログオンするとタグを外したVMが起動しました。どうやらタグの設定はスケーリングプラン側でリアルタイムで適用してくれるわけでは無く、新規のユーザー接続の際に反映されるようです。

検証②

以下の条件にて検証を実施しました。

事前準備

①ランプアップ時の容量しきい値は60%に設定
②ランプアップ時のホストの最小割合は25%に設定
③4台中3台のVMについて除外タグを設定
④4ユーザーでAVDに接続
⑤セッションホストは4台起動
⑥その後、全ユーザーをログオフ

本検証はピーク時に実施します。④、⑤により既に4台のセッションホストが起動しており、2台のセッションホストに2ユーザーずつ、残りの2台は起動しているもののユーザー数は0という状況です。この状態から4ユーザー全てログオフさせると、除外タグの設定が無ければ②の設定に従って3台のセッションホストはシャットダウンされるはずですが、今回は除外設定がされているため4台のセッションホストが起動したままとなります。

タグ設定の変更

この状態で3台のVMに設定されているタグを外してみます。すでにユーザーが一人も接続していないので、タグを外したらすぐにでも最低台数までセッションホストが停止してほしいところですが、実際に試してみるとVMは停止しませんでした。以下の通り状況は変わらずでした。

検証①と同様に新規のユーザー接続の際にタグ設定の変更が反映されるようで、その後いろいろと試してみたところ、新たに1ユーザー接続させるとセッションホストが停止するという挙動になりました。セッションが増えるとセッションホストが減るというのは奇妙な挙動に思えますが、あくまでユーザーが新規接続した際にスケーリングプランの設定が適用されるということでこのような挙動になるようです。

まとめ

今回の検証から除外タグ設定でオートスケールの対象をコントロールすることはできるものの、タグの設定変更がリアルタイムで反映されるわけでは無いことが分かりました。実際の運用ではタグの設定を変更したうえでぞの状況に応じてセッションホストの増減が必要なのであれば手動で起動もしくは停止まで実施する必要が有るということになります。また、特に検証②の後段で実施したようにユーザーが接続したタイミングでスケーリングプランが再評価されてVM台数が減るというのは直観と合わないところだ思うので、そのような挙動も有り得るということはスケーリングプランの仕様上認識しておく必要が有ると感じました。

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