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はじめに
本記事では、以下の記事に引き続き CAFにおける戦略、計画を検討する際に役立つツールである 戦略と計画テンプレート の計画について、同様の事例をベースに記載していきます。
架空のシナリオとして、戦略編①にて記載している ”オンプレミス仮想環境の更改” についてで、計画のテンプレートには以下の項目があります。
・デジタル資産
・組織の調整
・スキル準備計画
・クラウド導入計画
このうち、「クラウド導入計画」は本テンプレートではなく Azure DevOps を活用し具体化します。
[CAF]戦略と計画テンプレートを使ってみる ~戦略編~ ① – Cloud Steady | パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
[CAF]戦略と計画テンプレートを使ってみる ~戦略編~ ② – Cloud Steady | パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
デジタル資産
デジタル資産の一覧はアプリケーション・ワークロード単位で記載します。今回のシナリオであるオンプレミス仮想環境の他に企業が保持する各システムを羅列していき、同時に管掌部門や優先度、どのようにクラウド導入するかの合理化案も勘案の上記述していきます。
アプリケーション/ワークロード | 事業部門 | ビジネスの優先順位(高、中、低) | 合理化案 |
---|---|---|---|
オンプレミス仮想環境/VDI | 全社 | 高 | Azure Virtual Desktop |
勤怠管理システム | 全社 | 低 | IaaS |
また、ワークロードの一覧とともにワークロードを構成するインベントリを収集する必要があります。インベントリの収集方法はビジネス成果によって変化し、クラウドへの移行であればサーバー名やOS、役割や台数といったサーバーの一覧を収集し、アプリケーションの刷新であればユーザーストーリーやAPI・データのインベントリを作成することになります。
組織の調整
CAF ではクラウドを導入し安定運用していくにつれ様々なチームが定義されていきますが、計画段階ではクラウドガバナンスチームとクラウド導入チームの2つのチームについて説明責任を持つ人材を任命します。
「技術的なタスクの提供」はクラウド導入チーム、「クラウドガバナンスの実装」はクラウドガバナンスチームの責任者名を記載します。
2つのチームの役割は、ガバナンスチームの意思決定者と導入チームの技術者の間で導入の際の情報ギャップをなくすほか、ガバナンスチームが策定したポリシー等のガバナンスを導入チームの作業に対して遵守しているかなどの検査等を行うことが想定されます。
今回は、クラウド導入チームには社内の情シスメンバーのうち仮想環境に詳しい人材を、クラウドガバナンスチームは いわゆる PM 相当の役割であり、戦略で定義した「重要なステークホルダー」と協議できる人材をアサインします。
技術的なタスクの提供 (クラウド導入チーム) | クラウド ガバナンスの実装 (クラウドガバナンスチーム) |
---|---|
〇〇太郎 | △△華子 |
スキル準備計画
クラウドで必要なスキルと既存スキルは相違するため、クラウドで必要なスキルの一覧化と既存組織のスキルをマップし合致させる必要があります。足らないスキルに関しては、MS Learnなどでスキルの学習を促すため以下のような表形式にて対象者と受けるべき学習コース等を検討していきます。
同時に、表を作成するだけではなく勉強会やハンズオンの実施、指定期日までに組織で Azure Administrator Associate 等の専門知識を備えた資格を10人取得するなどの KPI を設定するなど実際のスキルの習熟度を測定し現実的にスキルを準備していく方策にします。
今回はクラウドの経験や前提知識がないことを前提とするため、Azure の基礎的なコースのほかに導入しようとしている Azure Virtual Desktop のコースを加えています。スキルの準備計画として、1~3行目の基礎的なコースを全員受講した上で AZ-900 の取得を目指し、開発者等は Azure Administrator Associate や DevOps、Azure Virtual Desktop 用ラーニングパスを受講し、AZ-104 (Azure の実装・管理・監視に関する専門知識) 及び AZ-140 (Azure Virtual Desktop に関する専門知識) の取得を目指します。
コース名 | 対象者 (クラウドアーキテクト、管理者、開発者、運用者等) | レベル (100, 200, 300, 400) | ソース (MSラーニング、LinkedInラーニング、Udemy等) | 優先順位 (高、中、低) |
---|---|---|---|---|
Azure 向けの Microsoft クラウド導入フレームワーク | 管理者、開発者、クラウド アーキテクト、ビジネス ユーザー、クラウド エンジニア | 100 | MS ラーニング | 高 |
Azure の基礎 | 管理者、開発者、クラウド アーキテクト、ビジネス ユーザー、クラウド エンジニア | 100 | MS ラーニング | 高 |
Azure のビジネス価値を学ぶ | ビジネス ユーザー | 100 | MS ラーニング | 中 |
Microsoft Azure Administrator | 管理者、開発者、クラウド アーキテクト、クラウド エンジニア | 200 | MS ラーニング | 高 |
DevOpsプラクティス | 管理者、開発者、クラウド アーキテクト、クラウド エンジニア | 200 | MS ラーニング | 高 |
Azure Virtual Desktop を使用して Azure からリモート デスクトップおよびリモート アプリを提供する | 開発者、クラウド アーキテクト、クラウド エンジニア | 200 | MS ラーニング | 高 |
終わりに
テンプレートを埋めてみた結果、具体的で実行可能な計画が作成できるわけではなく、計画の準備段階の情報が整理されたまでの印象です。あくまで手助けであって、ワークロードのインベントリ収集や組織の策定、スキル準備などを勘案し、自らで具体的な計画を立案する必要があります。
また、実際の作業を実施・管理するクラウド導入計画は Azure DevOps を使用するなど従来のやり方とは相違する部分があり違和感があるかもしれませんが、クラウド導入においてはこれらが標準の手法となります。
まずはテンプレートを使用し戦略・計画を埋め、実際の計画を検討することからはじめてみることをおすすめします。