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はじめに
この記事ではCAFの戦略フェーズで検討するビジネス成果について掘り下げて解説します。戦略フェーズはクラウド導入がビジネス戦略と関係していることを確認し、一定の成果をあげるために何をするべきか検討を行います。
この記事を参考にすることで、クラウド導入時にあげたい成果を選定する際の役に立ててもらいたいと思います。
戦略全体の流れについては次の記事に詳細を記載していますので、併せてご確認ください。
[CAF]戦略と計画テンプレートを使ってみる ~戦略編~ ①
ビジネス成果とは
クラウド導入は一定のコストと時間がかかります。そのためクラウド導入によりどんな成果を得たいのかを定義し、クラウド導入が成功したと判断できる基準を設けて費用対効果を示す必要があります。この得たい成果をCAFでは「ビジネス成果」と呼びます。
ビジネス成果を定義することでクラウド導入プロジェクトのステークホルダー間で共通の目標を定めることができます。もしもプロジェクト中に対立が起こったとしても、この目標に立ち戻り改めて認識合わせすることで再度足並みをそろえられると考えられます。
また技術的な観点に加えてビジネス的な観点で話すことができるため、経営層からの合意を得るために重要になります。
ビジネス成果のカテゴリ
CAFではビジネス成果は次の5つ(※)のカテゴリに分類されています。いずれもクラウド導入によりもたらさせる成果となります。自分の組織が達成したいビジネス成果は何なのか考える際には以下のどのカテゴリに当てはまるのか選択するとよいでしょう。
カテゴリ | ひとこと説明 |
財務成果 | ・企業が得られる収益が増加する ・企業活動に費やされる費用が減少する |
機敏性成果(Agility) | ・市場へのサービス投入時間が短縮できる ・市場の変化に素早く対応することができる |
到達性成果(global reach) | ・国を超えたグローバルな展開が迅速にできる ・例えばクラウドを利用すると国に関係なくサービスを展開可能 |
顧客エンゲージメント成果 | ・顧客のニーズに応えられる、期待を上回ることができる |
パフォーマンス | ・システムが常に優れたパフォーマンスを発揮できる ・サービスの停止時間が少ない |
次にこの中で特に重要な財務成果、機敏性成果、パフォーマンスについて詳細を記載します。
本記事で取り扱わない到達性成果と顧客エンゲージメントについてここで少し触れておきます。
到達性成果は要求次第なところもありますが、すでにAzureは正解中にデータセンターが展開されており様々なリージョンを選択することができます。そのためAzureを選択している時点ですでに到達性成果は基本的には達成することができるのではないかと考えられます。
顧客エンゲージメント成果は実際はどんなニーズがあるかはその時にならないと分かりませんが、機敏性成果の「変化に素早く対応」というところに含まれるのではないかと考えられます。
財務成果
クラウド導入することで収益を増加させたい、またはコストを削減したいといった要望がある場合には財務成果が該当するカテゴリとなります。以下に財務成果に当てはまるケースを記載します。
【収益の増加】
- 新しい収益の流れを作る
新しく製品やサービスを生み出してこれまでなかった収益の流れを作る場合、その基盤にクラウドを活用する。 - 既存の収益を増加する
既存のビジネス問題を改善することで収益を増加したい場合、デジタル化により効率を上げるためクラウドを活用する。
【コストの削減】
- 資本支出(※)を削減する
これまでハードやデータセンターで稼働させていた業務システムをクラウドに移すことでコスト削減を目指す。休止期間が多い場合にはクラウドの従量課金の特性を生かしたコスト削減を目指す。
※固定資産の支出 - 将来発生するコストを回避する
データセンターやハード・ソフトウェアを利用する場合には将来発生する更新コストを考慮する必要がある。更新に必要な追加コストが基本的に発生しないクラウドを利用することで将来のコストを回避する。
機敏性成果(Agility)
”アジリティ”と表現されることもあります。クラウド導入により市場投入時間を短縮したい、プロビジョニング時間を短縮したいといった要望がある場合には機敏性成果が該当するカテゴリとなります。
新しいサービスや既存サービスのスケーリングが必要になった場合、ハードの調達などに数週間かかる可能性がありますがクラウド導入後は短時間でプロビジョニングやスケーリングが可能になります。
パフォーマンス成果
以下CAF公式ドキュメントにも記載のあるように、当たり前のようにシステムを稼働し続けるためにはサービス停止の防止やパフォーマンス低下の防止することが必要です。こういった信頼性の向上といった要望がある場合にはパフォーマンス成果が該当するカテゴリになります。
今日の技術社会では、お客様はアプリケーションは優れたパフォーマンスで常に使用できるものと思い込んでいます。 この期待が裏切られると、評判が損なわれ、大きい代償が長く続くことになります。
パフォーマンス成果の例 より抜粋
- パフォーマンスを向上する
企業が定める基準を満たすSLA値でクラウドにシステムを構成し、パフォーマンスの向上をする。 - 事業継続性を確保する
クラウドを利用してデータ保護や耐障害性構成を取ることで事業継続性を確保する。
おわりに
自分の組織が目指すビジネス成果のカテゴリは何のか?考えるためのヒントを記載いたしました。ビジネス成果はクラウド導入プロジェクトをスタートする際にメンバー全員が認識しておくべき重要なことだと考えています。プロジェクトメンバーの一部だけではなく全員にしっかり伝えることで、コミュニケーションの活発化やモチベーションも向上すると個人的に思っています。