はじめに
クラウドが世に普及して随分経ち、オンプレ回帰の空気がすこーし流れつつも結局メインシステムはクラウドの企業が増えているのかなと思います。クラウド環境においても当然エンジニアが管理・運用しているケースが多いと思いますが、そこにAIによる支援が入ると、この先クラウドコストはどうなっていくのでしょうか。
例えばAWSであればAmazon Q、Azureであればcopilot等、生成AIアシスタントがクラウド機能として装備され、今後日本でも活用が進んでいくと想定されます。
これがどのようにコストに影響するのか考えてみたいと思います。
まず間違いなく分析精度は上がる
生成AIアシスタントが導入されることで、クラウドコストの分析精度は確実に向上します。例えば Amazon Q や Azure Copilot は、リソース利用状況を自動で読み取り、オーバープロビジョニングの解消や料金プランの最適化を提案してくれます。従来、熟練エンジニアが数時間かけて調査していた内容を、数秒で可視化できる点は非常に大きいでしょう。また、タグ付け漏れの検出、未使用リソースの洗い出し、料金変動の予測など、従来は個人のスキル差が出やすかった領域も標準化されます。結果として、エンジニア全体の分析レベルが底上げされ、適切なコスト削減アクションにつながる確率が高まっていくはずです。
ただし効果は限定的?考えられる3つの要因
AIはコストのトレードオフ関係を考慮し勝手な設定変更はしない
生成AIアシスタントは、利用者の意思を無視して勝手にリソース構成を変えることはありません。なぜなら、コスト削減には「性能の低下」「運用工数の増加」「可用性への影響」といったトレードオフが必ず存在するためです。AIはこれらのリスクを判断できても、最終的な意思決定の責任までは負えません。結果として、AIが提案をしても実行されず、削減効果が限定的になるケースが一定数発生します。
エンジニアのコスト意識が変わるわけではない
AIが提案してくれるとはいえ、エンジニアのコスト意識が急に変わるわけではありません。日常業務では新機能対応や障害対応の方が優先され、コスト最適化は後回しになりがちです。また、提案内容が正しくても、検証や影響調査に時間がかかるため、採用されないケースも多くあります。結局のところ、AIがいくら高度な分析を行っても、運用側がその“提案を実行する意思”を持たなければ大きな効果は生まれません。
クラウド事業者側も自社利益のために大幅な削減は行わない、と想定される
Amazon Q や Copilot は便利ですが、そもそもクラウド事業者が提供しているツールである以上、「事業者側の利益を大きく削るような最適化」を積極的に促すことは考えにくいものです。実際の提案は、無駄を減らす適正化や、より高効率なサービスへの移行、予約機能などの利用期間を延長するものが中心で、大幅な料金削減につながるものは少ない印象です。また、見えないコスト(アンマネージドディスクをマネージドディスクに変換すると裏でVHDファイルが残ってしまうような)も都度都度発生しています。こういった事象を踏まえると、クラウド事業者は“節度ある最適化”を支援する立場であり、利用料金そのものが劇的に下がる構造にはならないのではないか、と想定されます。
まとめ
生成AIアシスタントによってコスト削減の“機会”は確実に増えますが、最終的にコスト最適化を進めるかどうかは管理者の意思次第です。その意思が強ければ、AIの支援によって削減幅は今まで以上に大きくなるでしょう。しかし、意思や優先度といった“人の感情や行動”はAIによって直接変わるものではありません。したがって、生成AIアシスタントがいくら普及したとしても、クラウドコスト全体が劇的に減少する未来を描くのは容易ではないと言えます。
それでもコストを削減したい時には…
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おわりに
生成AIアシスタントは弊社も日々扱っておりますが、まだまだ精度は十分ではありません。とはいえ、最近のAIの成長もすさまじいため、キャッチアップを怠らず、自社・お客様に価値を提供できるようウォッチしていきたいと思います。


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