マネージドディスクのパフォーマンスを”チョビっとだけ”上げる3つの技

こんにちはDXソリューション本部の村松です。

 

Azure限らず、パブリッククラウドにおいては仮想マシンにアタッチするディスクのフォーマンスのスケールアップ(性能アップ)、スケールダウン(性能ダウン)を容易におこなうことができます。
Azureのマネージドディスクにおいても複数のストレージの種類(SKU)やパフォーマンスの種類が用意されており、Standard HDD→Standard SSD→Premium SSD→Premium SSD V2→Ultra Diskになるにつれて高性能になっていきます。
ただ、ほんのわずかなパフォーマンス不足や、大容量のデータ移行等で一時的にIOPSが必要な場合など、わざわざストレージの種類(SKU)やパフォーマンスレベルを上げるのは性能やコストのバランスからあまり積極的になれない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は「マネージドディスクのパフォーマンスを”チョビっとだけ”上げる3つの技」と題してマネージドディスクのパフォーマンスを「ほんの少しだけ上げる方法(ソリューション)」を紹介したいと思います。

 

1.ディスクキャッシュ(“ホストキャッシュ”ともいう)

ディスクキャッシュ(“ホストキャッシュ”ともいう)はマネージドディスクへの書き込み/読み込みをキャッシュを介して行う機能です。
こちらはマネージドディスク自体の性能(IOPSやスループット)を上げるわけではありませんが、キャッシュを介して書き込み/読み込み時の待ち時間を短くすることにより、アプリケーション全体のパフォーマンスを向上させることができます。この機能はマネージドディスクごとに設定し、オプションとしては「読み取り/書き込み」「読み取り専用」から選ぶことができ、「読み取り専用」の場合はディスクの読み取り時のみキャッシュを介します。

この機能はストレージの種類(SKU)やパフォーマンスレベルの変更をしないので無料で使えます。

 

ディスクキャッシュ
https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/virtual-machines/premium-storage-performance#disk-caching

 

ただし、アプリケーションによってはこの機能をつかうことでアプリケーションの正常性や逆にパフォーマンスが低下する場合がありますので、この機能を検討の際は各アプリケーションの公式ドキュメント、またはサポート窓口にご確認ください。

 

※SQL Serverにおいては、データ ファイルを格納するマネージドディスクでは「読み取り専用」トランザクションログを格納するマネージドディスクではホストキャッシュを用いないことが推奨されています。

ストレージ: パフォーマンスのベスト プラクティスおよびガイドライン – SQL Server on Azure VMs | Microsoft Learn

 

※Active DirectoryにおいてはSYSVOLやNTDSファイルを格納するディスクについてはホストキャッシュを用いないことが望ましいです。

ドメイン コントローラーの構築時に言われないと気付かないこと | Microsoft Japan Windows Technology Support Blog

Azure上で Active Directory の構築&ドメイン参加 #dns – Qiita

 

2.Performance Plus

Performance Plusはストレージの種類(SKU)やパフォーマンスレベルの変更なしで性能(IOPSやスループット)を向上させる機能です。
これにより例えばPremium SSD(1024GB/P30)のマネージドディスクでこの機能を有効にするとIOPSは5000IOPS→8000IOPS、スループットは200MB/s→300MB/sにパフォーマンスが向上します。
Standard HDD、Standard SSD、Premium SSD のマネージド ディスク (513 GiB 以上) であれば有効にできるようですが、確認する限りではPremium SSD(1024GB/P30)以上でないと効果はでないようです。


また、この機能はマネージドディスク作成時にしか有効にすることはできません。

後からこの機能の有効にする場合は、既存のマネージドディスクのスナップショットを取得し、
そこからマネージドディスクをPerformance Plusを有効化した状態で作成して、既存のディスクの入れ替えてください。
こちらの機能もストレージの種類(SKU)やパフォーマンスレベルの変更をしないので無料で使えます。

 

Premium SSD と Standard SSD/HDD のパフォーマンスを向上させる – Azure Virtual Machines | Microsoft Learn

 

 

3.オンデマンド バースト/クレジットベースのバースト

マネージドディスクには”バースト”とよばれる機能があり、マネージドディスクに対して高負荷がかかった際に一時的にプロビジョニングされた性能(IOPSとスループット)を超えてパフォーマンスを発揮することができます。
“バースト”には“オンデマンドバースト”“クレジットベースのバースト”の2種類がありますが、実は、Standard SSD(1024GB/E30)以下、もしくはPreminm SSD(512GB/P20)以下のマネージドディスクでは”クレジットベースのバースト”が有効になっています。(マネージドディスクの利用料金に含まれている)
これによりマネージドディスクに高負荷がかかった時にバーストが発動し、プロビジョニングされた性能(IOPSとスループット)を超えるパフォーマンスを発揮することができます。
バースト時のIOPSやスループットは各マネージドディスクで定められており、例えばPremium SSD(512GB/P20)のマネージドディスクでバーストが発動すると、IOPSは2300 IOPS→3500 IOPS、スループットは150MB/s→170MB/sにパフォーマンスが向上します。
しかし、クレジットベースのバーストは最長 30 分間しか連続して発動させることができず、それを超えるとパフォーマンスは元のプロビジョニングされた性能(IOPSとスループットに戻ります。連続のバースト発動時間やディスクのアイドル状態(待機状態)にもよりますが、再度30分間連続してバーストが発動するには約1日ほど掛かります。

 

それに対して”オンラインバースト”は最大 30,000 IOPS および 1,000 Mbps までパフォーマンスを無制限に発揮するとができます。
この機能は 513 GiB 以上の Premium SSDで有効にすることができますが、有効にする際はAzure VMからマネージドディスクをデタッチ(取り外し)するか停止(割り当て解除)にする必要があります。

ただし注意点として、オンラインバーストの課金は“[オンラインバーストの有効化の定額料金]+[バースト トランザクション数の従量課金]”で課金されるのですが、この内、[バースト トランザクション数の従量課金]についてはプロビジョニングされた性能(IOPSとスループット)を超えた処理をどれくらいの時間、処理数で行ったかによって変動します。

これにより想定外の課金が発生する可能性がありますので、見積もりツールで想定される最大IOPS,最大スループット、バースト発動時間からおおよそ金額を予測しておくことお勧めします。

 

クレジットベースのバースト

 

オンデマンドバースト

 

ちなみに以下の見積もり金額はPremium SSD(1024GB/P30)でディスクバーストを有効とし、バースト発生時の予想される最大IOPSを限界値の30000 IOPS,最大スループットを限界値の1000 MB/sとし、それを720分(12時間)処理した際の見積もり金額になります。

([バースト トランザクション数の従量課金]だけで、¥122,390も掛かります…)

 

いかがでしょうか?

今回は「マネージドディスクのパフォーマンスを”チョビっとだけ”上げる3つの技」と題してマネージドディスクのパフォーマンスを「ほんの少しだけ上げる方法(ソリューション)」として以下の3つを紹介させていただきました。

 

1.ディスクキャッシュ(“ホストキャッシュ”ともいう)

2.Performance Plus

3.オンデマンド バースト/クレジットベースのバースト

 

もし、Azure VMにアタッチしたマネージドディスクの性能がでない場合は、ストレージの種類(SKU)やパフォーマンスレベルを上げるといった対応の前に、上記の方法(ソリューション)を試していただければと思います。。

 

以上 今回はここまでになります。またの機会にお会いしましょう!

 

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