GPT-4oでもChain of Thoughtが効く理由——高性能LLMの“思考の制御”

1. はじめに:GPT-4oは“賢い”、でも…

こんにちは。NewITソリューション部です。今回は生成AIがテーマです。

GPT-4oやGemini 2.5の登場により、私たちはかつてないほど自然で論理的な回答を手に入れられるようになりました。たとえば、売上低下の原因や、プロジェクトの遅延要因を尋ねると、驚くほど明快な答えが返ってきます。実際、「Chain of Thought(CoT)」と呼ばれる段階的思考プロンプトを使わなくても、すでに段階的に考える“癖”がモデルに備わっているように見えます。

ですが──
“明快に見える答え”は、いつも安定して出てくるわけではありません。

2. 問題:出力の“粒度”と“構造”がランダムにばらつく

高性能なLLMほど、入力に対して多様な角度から思考できるため、出力にも「その時々のゆらぎ」が生じます。

たとえば同じ質問を3回投げても:

回数GPT-4oの出力傾向
1回目要因を2つに分けて簡潔に説明
2回目要因を5段階で精緻に展開し、改善提案もあり
3回目主因だけを強調して終わる(やや浅い)

これでは、報告資料への転用や、複数回の比較検討には向きません。出力の構造が毎回変わってしまうからです。

3. 解決策:Chain of Thoughtは“思考の再現性”を高める設計技法

 Chain of Thoughtとは、LLMに段階的な思考プロセスを「命令」として指示するプロンプト設計です。
これは“LLMを誘導するため”ではなく、思考の粒度・視点・順序をコントロールするために使います。

比較例:プロジェクト遅延の原因分析

・ CoTなし

▶プロンプト
プロジェクトの納期が1ヶ月遅れました。以下の状況を踏まえて原因を教えてください。
 - 要件変更が2回発生
 - リーダーが途中で交代
 - メンバーに新人が含まれる
 - レビュー体制が弱い
▶出力(GPT-4o)
遅延の原因は、要件変更やリーダー交代、新人メンバーによる作業効率の低下、レビュー体制の不備など複数の要因が重なったことにあると考えられます。

⇒ 説明は成立していますが、どの要因がいつ影響したか、順序や因果は曖昧です。

・CoT指定あり

▶ プロンプト
プロジェクトの納期が1ヶ月遅れました。
以下のステップでChain of Thought(段階的思考)を用いて分析してください。
 1. 現状の出来事を時系列で整理
 2. 各要因の影響を個別に推定
 3. 遅延の主因を特定
 4. 再発防止策を提案

 【前提情報】
 ・要件変更が2回発生
 ・リーダーが途中で交代
 ・メンバーに新人が含まれる
 ・レビュー体制が弱い
▶ 出力(GPT-4o)
1.時系列整理:中盤と後半に要件変更、終盤でリーダー交代
2.要因分析:要件変更→再設計、リーダー交代→意思決定の遅延、新人→手戻り増、レビュー不足→バグ検出遅れ
3.主因特定:要件変更+レビュー体制不備の連携が主要因
4.対策:仕様凍結の明確化、Wチェック体制の導入

⇒ 出力が一貫した構造になり、視点の抜けも少なく、報告書への転用がしやすくなっています。

Chain of Thoughtとは、LLMに段階的な思考プロセスを「命令」として指示するプロンプト設計です。
これは“LLMを誘導するため”ではなく、思考の粒度・視点・順序をコントロールするために使います。

4. CoTがもたらす本当の価値:「再現性」と「整形性」

GPT-4oのようなモデルは、一回きりの“インスピレーションとしての回答”は非常に優秀です。
しかし、実務で求められるのは次のような要件です:

要件CoTが果たす役割
誰にでも通じる論理展開段階的構造で可読性を確保
何度やっても同じ出力構造指示された枠組みで再現
社内報告で使える文体と構造出力フォーマットを固定化
比較検討に使える一覧性思考の粒度を統一

5. 応用例:議事録・企画・アイデア出しにも使えるCoTの型

📝 議事録要約(CoT指示あり)

以下の議論を、Chain of Thoughtで要約してください。
 1. 発言者ごとの主張を抽出
 2. 発言同士の関係性を記述(同意・対立など)
 3. 合意点と次のアクションを明示

⇒ 出力が再利用しやすい「議事録テンプレ」に整形されて返ってくる。

💡 アイデアブレスト(CoT指示あり)

この条件で新サービスの企画アイデアを出してください:
 1. 顧客ニーズの抽出
 2. 既存類似サービスとの比較
 3. 差別化された提案を複数提示

「なぜそのアイデアに至ったのか」が明確な状態で提案が返ってくる。

まとめ:CoTは“賢さ”を活かすための「整える技術」

GPT-4oは思考モードを持つ賢いモデルです。しかし、だからこそその自由さが出力のムラに変わることもあるのです。

Chain of Thoughtは、そんな賢いモデルの思考の粒度・順序・視点を“整える”技術です。
それは、「より良い答えを得るためのプロンプト」ではなく、「業務で使える形に仕上げるためのプロンプト」なのです。

最後に、弊社にご興味をお持ちいただけましたらお気軽にお問い合わせいただけると幸いです。

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