目次
1. はじめに
2. 今回の課題
3. 課題の詳細
4. AIエージェント作成
5. 最終的な指示文の内容
6. 今回の作成ポイント
7. 効果
8. 課題
9. さいごに
1. はじめに
こんにちは、NewIT部の村田です。
近年、生成AIを活用したエージェントが自律的にタスクを実行できるようになってきました。しかし、「エージェントとは何か」「実際にどのような課題を解決できるのか」については、まだイメージしづらい方も多いかと思います。
そこで本記事では、実際に課題解決を行うAIエージェントの事例を通じて、AIエージェントがどのように業務を支援できるのかを具体的にご紹介します。
AIエージェントによる自動化ツールには、次のような強みがあります。
・自然言語で指示・作成できるため、細かなニュアンスやフォーマットの変化にも柔軟に対応できる
・言葉によるフィードバックを反映し、使う人のやり方や要望に合わせて進化できる
・コマンドや専門知識がなくても、「こうしたい」という意思を自然な言葉で伝えるだけで実行できる
これらの特徴を踏まえ、AIエージェントがどのように業務課題を解決できるのか、ぜひご覧ください。
2. 今回の課題
毎回、エクセルから必要な情報を読み取って作業するのが面倒
3. 課題の詳細
今回の課題は、次のような状況に対するものです。
・エクセルで管理しているデータから、必要な情報だけを抽出して報告書を作成したい
・この作業が定期的に発生し、毎回手作業で対応しているため、意外と時間がかかっている
・自動化したいが、エクセルからのデータ抽出には専門的な知識や時間が必要で、なかなか着手できていない
こうした背景から、AIエージェントによる自動化の導入をしました。
4. AIエージェント作成
AIエージェントを作成する際の基本的なアプローチは、以下の3ステップです。
1. まずはタスクを依頼し、エージェントと一緒に作業を進める
新人に仕事を教えるようなイメージで、最初は具体的な指示やフィードバックを与えながらタスクを完遂させます。
2. タスク完了後、再利用できるように手順や注意点を整理させる
エージェント自身に、実行した内容や注意事項をドキュメント化させることで、次回以降も同じ作業を自動で実行できるようにします。
3. 以降は整理した情報をもとに、エージェントに自律的に実行してもらう
一度整理した手順を活用し、簡単な指示だけで繰り返しタスクを任せられるようになります。
この流れを意識することで、エージェンをスムーズに作成できます。
4-1. まずはタスクを依頼し、エージェントと一緒に作業を進める
自分:「inputフォルダにエクセルを置いたので、顧客ごとに必要な情報を抜き出して報告書を作成してください」
エージェント:「pythonファイルを作成して読み取ります。最初の10行読み込むのでどんな情報が必要か教えてください」
自分:「顧客名がA社の金額と内訳を抜き出してください」
エージェント:「了解しました。read.pyを作成しました。read.pyを実行してもよろしいですか?」
自分:「はい。お願いします。」
エージェントの実行結果をもとに、どういう情報が必要かを確認し、フィードバックを繰り返す
4-2. タスク完了後、再利用できるように手順や注意点を整理させる
エージェント:「報告書を作成しました。」
自分:「ありがとう。完璧です。次回も同じことを実行できるように、指示や作業の注意点をメモに記載して覚えておいてください。」
エージェント:「了解しました。order.mdに記載しました。」
4-3. 以降は整理した情報をもとに、エージェントに自律的に実行してもらう
自分:「order.mdを実行してください」
エージェント:「了解しました。order.mdに従って、inputフォルダのエクセルから必要な情報を抜き出して、outputフォルダに報告書を作成します。」
自分:「ありがとう。完璧です。」
5. 最終的な指示文(order.md)の内容
2回目以降AIエージェントに実行してもらうために、指示やポイントをファイルに残します。
詳しく記載されていますが、AIエージェント自身が作ったものであり、人間の作業は内容確認のみです。
請求データから必要情報を読み取って、連携用のエクセルを埋めてください。
### 入力ファイル今月を2025年4月とすると、以下のファイルを使用します。実際に利用する際は、今月の年月に合わせて読み取るファイル名を変更してください。請求データ:請求データ_202504.xlsx連携用のエクセル:連携_202504.xlsx
### アウトプットファイルoutputフォルダにファイルを出力してください。
### 請求データ読み取りの注意事項– 顧客名が「A社」と部分一致する行を対象としてください。完全一致だけではないです。– 金額は必ず数値として取得し、単位やカンマが含まれている場合は除去してください。– 空白行や合計行は除外してください。– データに不明点や例外があれば、別途コメントとして報告書に記載してください。– エクセルのシート名が異なる場合は、必ず確認してから処理を進めてください。
### 連携用書き込み時の注意事項– 書き込み対象となるシート名やセル範囲を必ず確認してください。誤った場所に上書きしないよう注意してください。– 既存データを消さないよう、追記や上書きの際は必ずバックアップを取ってから作業してください。– テンプレート行(最初の数行)は編集せず、データ行のみを書き込んでください。– 書き込み後は、意図した内容が正しく反映されているか必ず確認してください。– 書式(フォーマット)が崩れないよう、セルの書式設定や数式を変更しないようにしてください。– エラーや不明点があれば、作業を中断し報告してください。
6. 今回の作成ポイント
今回のAIエージェント作成におけるポイントは、以下の通りです。
・エクセル内の「どの情報が欲しいか」だけを伝えれば、Pythonコードの作成・修正・実行はAIエージェントが自律的に対応
⇒ コードの知識がなくても、業務担当者自身が自動化を進められる。
・Pythonファイルの実行もエージェントが提案し、人間は許可するだけでOK
⇒ 誰でも簡単にタスクを実行できる仕組みとなる。
・エージェント自身にorder.mdへ実行手順や注意点をまとめさせることで、以降は「order.mdを実行して」と一言伝えるだけで再現可能
⇒ 繰り返し作業の自動化・標準化が容易になる。
・自然言語で指示内容を記録しているため、多少のフォーマット変更やニュアンスの違いにも柔軟に対応
⇒ ツールや固定的なコードではなく、AIエージェントを活用する意義がここにある。
このように、AIエージェントを活用することで、専門知識がなくても業務自動化を実現でき、継続的な改善や運用も容易になります。
7. 効果
今回のAIエージェント導入により、次のような効果が得られました。
・エクセルから必要な情報を自動で抽出できるようになり、手作業の工数を大幅に削減できました。
・定期的な作業でも、過去の手順や注意点を都度確認する必要がなくなり、スムーズに業務を進められるようになりました。
・作業内容や指示がorder.mdに整理されているため、担当者が変わっても同じ手順で再現でき、業務の標準化・引き継ぎが容易になりました。
・フォーマットや要件の変更にも柔軟に対応できるため、継続的な業務改善が可能となりました。
8. 課題
エクセルファイルのフォーマットが複雑な場合(例:ヘッダーが複数行に分かれている、セルの結合が多いなど)、AIエージェントに正確な構造を伝えるのが難しくなります。そのため、エージェントを効果的に活用するには、できるだけシンプルで分かりやすいフォーマットに整えることも重要です。今後は、エージェントがより柔軟に対応できるよう、フォーマットの標準化や事前のサンプル提供なども検討していきます。
9. さいごに
生成AIのチャットだけでは解決が難しい業務課題も、AIエージェントを活用することで効率化や自動化が可能になるケースが増えています。「自社の業務もAIエージェントで改善できるだろうか?」とお考えの方は、ぜひNewIT部までご相談ください。貴社の業務内容や課題に合わせて、最適なAIエージェントの導入方法をご提案いたします。お気軽にお問合せください。