クラウド時代の基盤、Azure仮想マシンのコストについて

はじめに

近年、クラウドへの移行が加速する中で、「サーバーをもっと柔軟に運用したい」「オンプレミスのサーバー管理を減らしたい」と考える企業が増えています。そこで注目されるのが、Microsoft Azureの仮想マシン(VM)です。

Azure VMを活用すれば、物理サーバーを用意することなく、数分でサーバー環境を構築でき、必要に応じて自由にスケールアップやスケールダウンが可能です。

この仮想マシンのコストを意識したことはありますか?

コストは利用している間は長期で発生するものです。同じ性能でも、安く利用できる方が長期間利用する場合、大きな収益効果になる場合もあります。

本記事では、VMの料金形態とコスト削減方法について解説をします!

この記事がAzureの利用を検討している人や初めて仮想マシンを作成する人の参考になれば嬉しいです。

Azure 仮想マシンとは

Azureの仮想マシンは、1台の物理コンピューターの中に作られる「仮想のコンピューター」です。

通常のPCやサーバーと同様にWindowsやLinuxなどのOSをインストールして利用します。

また、物理コンピューターのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を分割し、それぞれの仮想マシンに割り当てることで利用することができ、様々な用途で利用されます。

 

①開発、テスト環境の構築

OSやアプリケーションの動作を検証するために利用します。

 

②サーバーの統合

1台のサーバーに複数の仮想マシンを配置することでハードウェアの台数を削減し、コストと管理の負担の軽減ができます。

(例)利用用途ごとに仮想マシンを作成し、物理サーバーの台数を削減しコスト削減

 

③災害対策

事例:災害時に業務を止めないためのバックアップ

サーバーがダウンしても、クラウド上の仮想マシンに切り替え、業務を継続してできるようにすることができます。

 

④業務環境の提供

クラウド上に仮想マシンを作成し、リモートデスクトップ環境を提供することでインターネット経由で作業をすることができます。

 

仮想マシンは、様々なシリーズがあるため、利用用途に応じた性能やサイズを選べるのが特徴です。

性能やサイズについては後述しますが、上記以外にも利用用途は様々ありますが、柔軟に対応できる点がAzure仮想マシンのメリットです。

 

Azure仮想マシンのコスト構造

Azure仮想マシンのコストは「コンピューティング料金」と「ストレージ料金」の二つの料金に分けられます。

 

【コンピューティング料金】

(1)仮想マシンのサイズ

選択したサイズによってvCPUの数やメモリ容量が異なります。

【例】

<VM1>

vCPU:2

メモリ容量:8GiB

一時ストレージ容量:16

<VM2>

vCPU:1

メモリ容量:1GiB

一時ストレージ容量:4

 

(2)仮想マシンのシリーズ

Aシリーズ、Bシリーズ、Dシリーズなど豊富な種類のシリーズがあります。

利用用途に合ったシリーズを選択する必要があります。

vCPUの数やメモリ容量が同じでもシリーズによってパフォーマンス(できること)が異なります。

 

【ストレージ料金】

(3)ディスクの種類

ディスクはOSディスク(Cドライブ)、一時ディスク(Dドライブ)、データディスクの3種類に分けられます。

さらに、OSディスクとデータディスクは

・Standerd HDD

・Standard SSD

・Premiun SSD

の3種類から選択することができます。

※OSディスクとデータディスクで異なる種類のディスクを利用することができます。

※以下の画面で選択することができます。

 

(4)帯域幅(データの転送量)

転送されたデータ量(GB単位)に基づいてコストが発生します

 

(5)OSイメージ

主にWindowsもしくはLinuxのどちらかを選択します。

Windows仮想マシンは、選ぶイメージによってサーバーライセンス料金が別途発生します。

Linuxの仮想マシンでライセンスが必要なものは、イメージの料金にサーバーライセンス料金が含まれているため、購入時にサーバーライセンス料金を考慮する必要がありません。

 

(6)リージョン

東日本リージョンや西日本リージョン等デプロイするリージョンによって料金が異なります。

 

仮想マシンのサイズの種類

仮想マシンサイズには種類が豊富であり、利用用途に応じて選択できることが特徴です。

本記事では、選択されることが多いサイズをピックアップしてご紹介します。

(1)Bシリーズ

他の仮想マシンと異なり、「CPU クレジット」という仕組みを使って処理能力を管理する特別なタイプの VM です。

簡単に言うと、「普段はおとなしく動き、必要なときだけ一時的にパワーアップできる VM」になります。

【コスト構造】

基本料金+CPUクレジットの課金

「ベースライン」基準以上のCPUパフォーマンスを使用するときに追加でCPUクレジットを購入すると追加料金が発生します。

 

(3)Dシリーズ

一般的に選択されることが多いシリーズとなります。

ゲームサーバー、メディアサーバー、アプリケーションサーバーなどに利用されることが多いです。

 

(4)Eシリーズ

メモリの負荷の高いアプリケーション向けに利用されます。

主にメモリを大量に消費するアプリケーション、リレーショナルデータベースサーバー、ビジネスインテリジェンスアプリケーション等に利用されることが多いです。

 

(5)Fシリーズ

バッチ処理やWebサーバー、分析、ゲーム等に利用されることが多いです。

 

(6)Gシリーズ

負荷がかかるアプリケーションに利用され、SQLデータベース、NoSQLデータベース、データウェアハウスソリューション等に利用されることが多いです。

 

仮想マシン利用料金の削減方法

VMを利用料金はAzure全体の利用料金の中で大きくなりやすいリソースの一つです。

その料金を削減する方法について紹介します。

 

①RI(リザーブドインスタンス)

VMにRIを利用することで、従量課金制と比較すると最大72%コスト削減をすることができます。

RIの購入は1年分もしくは3年分から選択することができます。

料金の支払い方法は、前払いもしくは月払いから選択することができます。

購入するときは、SKU、リージョン、数量を指定し、購入後はAzure環境でデプロイされているVMから購入時の条件に合ったVMに割引が適用されます。

 

そのため、適用対象の仮想マシンが今後利用しない場合、RIの数量が余ってしまい、無駄なコストを発生させてしまうこともあります。

常時稼働する必要がないVMにはRIの利用率が100%(最大限)利用できていない時間が発生する恐れもあるため、注意が必要です。

 

②節約プランの利用

節約プランを利用することで従量課金制よりも最大65%コストを削減することが可能です。

1年または3年間利用することができ、設定したコミットメント額×1年分もしくは3年分※を購入し、利用することができます。

※コミットメント額:節約プランを利用する上で割引が適用できる金額となります。

金額は過去30日間の利用量に基づいて金額が推奨されます。

(例)VM1の利用料金が1時間当たり、常に100円発生していた場合

節約プランを1年購入すると20%割引になる場合は、1時間当たり80円分購入しておけばよいということになります。

もし1時間当たり節約プランの80円分の利用料を超えた場合には、超過分は従量課金制によって課金されます。

 

 

また、RIでは常時稼働することが前提となりますが、節約プランでは、リソースの利用量が異なる場合でも、節約プランが適用できるリソースがあれば、コミットメント額まで割引されます。

仮想マシンを割引価格で利用したい場合は、節約プランを利用するのがおすすめです。

さらに、RI(リザーブドインスタンス)と併用することも可能なため、必要に応じて併用することも検討してみてください。

 

③SpotVMの利用

Spot VMは、未利用のAzureコンピューティング容量を割引価格で利用できる仮想マシンです。

従量課金制よりも最大90%安くなる場合があります。

しかし、リソースが必要になり、未利用のリソースがない場合は強制停止・削除される場合があります。

そのため、常時安定稼働が必要な仮想マシンや停止されると困るシステムの場合には利用は向いていません。

 

しかし、検証環境など一時的にVMを利用したい場合や、バッチジョブ(一時的に行う処理)では

Spot VMを利用することでコストを削減することができます。

Spot VMの利用する場合は、Azure仮想マシンの新規作成画面で「Azure Spot割引で実行する」にチェックを入れることで利用することができます。

 

【注意点】

・Bシリーズ、Dv2シリーズ、Hシリーズ、NVシリーズ、NCシリーズは利用できません

・契約形態がスポンサー(0036P、0136P)-Fairfaxの場合場利用することができません

 

④その他の方法

余計なコストを発生させないための方法として、Azure仮想マシンの不要な関連リソースの削除があります。

使わなくなった仮想マシンを削除した場合、以下が原因で無駄なコストが発生する場合があります。

 

【仮想マシンを削除してもコストが発生するケース】

・仮想マシンのOSディスクを削除しなかった場合

・仮想マシン用に作成したパブリックIPアドレスを削除しなかった場合

・仮想マシン用に作成したNICを削除しなかった場合

など

 

上記のケースが一般的に多いため、仮想マシンを削除する場合、関連リソースを利用しない場合は削除することで無駄なコストを抑えることができます。

 

さいごに

今回はAzure仮想マシンを利用する場合に発生するコストと、コスト削減方法について紹介しました。

Azure仮想マシンは、Azureを利用する人であればだれでも利用するため、RIなどを利用してコストを削減しましょう。

この記事がAzure仮想マシンを利用するときの参考になればと思います。

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