この記事は更新から24ヶ月以上経過しているため、最新の情報を別途確認することを推奨いたします。
はじめに
本記事では、Azureへのサーバー移行ツールの一つであるAzure Site Recovery(以降、ASRと記載します)を使用した物理サーバーのAzureへの移行検証について紹介します。物理サーバーのAzureへの移行のためのASRの構成方法については以下の公式ドキュメントがあります。
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/site-recovery/physical-azure-set-up-source
前提条件や詳細な手順が記載されており非常に参考になりますが、実際に検証しようとすると物理サーバを最低でも2台(移行用サーバーと構成サーバー)用意する必要があり場合によってはハードルが高くなることでしょう。私も検証のために物理サーバー2台用意するのは困難な状況でありました。そこで、Azure 仮想マシンを物理サーバーに見立てて、上記の手順でサーバー移行が可能か否か検証してみることにしました。物理サーバーの代わりにAzure仮想マシンを使用することに検証の意味はあるのかという疑問もありますが、手順を確認するという意味では有用であったと考えております。
検証の結論から述べると上記の参考資料と同様の手順でサーバーの移行が可能であることが確認できました。物理サーバーを用意せずとも移行手順を確認することができたこと、物理サーバーのAzureへの各種移行検証に物理サーバーの代替としてAzure仮想マシンを使用することも選択肢となると確認できたことが今回の収穫となりました。それでは以下で今回の検証手順を示したいと思います。
構成図
今回の検証で使用する環境の構成図は以下となります。
手順概要
1.移行元環境構成
2.構成サーバーのセットアップ
3.移行先環境構成
4.ASR設定① レプリケーションポリシーの作成
5.ASR設定② インフラストラクチャの準備
6.ASR設定③ レプリケート設定
1.移行元環境構成
以下、移行元環境の構成手順を示します。今回はAzureポータルを使用する場合の手順について記載しております。
また、ASRの構成手順については基本的に公式ドキュメントの記載の通りではありますが、本記事でも記載することにします。一方で、仮想マシンの作成などASRとは直接関係のない手順については適宜割愛させていただきます。
1.はじめにオンプレミス環境相当のAzure仮想ネットワークを作成します。作成時の各種パラメーターは以下としました。
・仮想ネットワーク名:Source-NW
・アドレス空間:192.168.0.0/16
・リソースグループ:Source-RG
・場所:東アジア
・サブネット名:default
・サブネットアドレス空間:192.168.1.0/24
※その他のパラメーターは全て既定値を使用
2.次に移行対象物理サーバー相当のAzure仮想マシンを作成します。作成時の各種パラメーターは以下としました。
・リソースグループ:Source-RG
・仮想マシン名:SourceVM01
・地域:東アジア
・可用性オプション:インフラストラクチャ冗長は必要ありません
・イメージ:Windows Server 2008 R2 SP1
・サイズ:Standard A1 v2
・ユーザー名:sourceadmin
・受信ポートを選択:RDP
・OSディスクの種類:Standard HDD
・マネージドディスクを使用:いいえ
※その他のパラメーターは全て既定値を使用
3.オンプレミス相当環境に構成サーバ用のAzure仮想マシンを作成します。作成時の各種パラメータ―は以下としました。
・リソースグループ:Source-RG
・仮想マシン名:ConfigurationSV
・地域:東アジア
・可用性オプション:インフラストラクチャ冗長は必要ありません
・イメージ:Windows Server 2012 R2 Datacenter
・サイズ:Standard A8 v2
・ユーザー名:sourceadmin
・受信ポートを選択:RDP
・OSディスクの種類:Standard HDD
・マネージドディスクを使用:いいえ
※その他のパラメーターは全て既定値を使用
※公式ドキュメントの前提条件に記載されている通り、構成サーバーは最低でもCPU:8コア、メモリ:16GBが必要であるため、仮想マシンのサイズはStandard A8 v2(8コア、16GB)としました。
4.構成サーバー用のAzure仮想マシンにディスクを追加します。
公式ドキュメントの前提条件にある通り、追加ディスク(600GB×2)が必要であるため600GBのディスクを追加します。
本来600GBのディスクが2本必要ですが、今回は移行の検証でありフェールバック用のディスクは不要であるため1本でも十分です。追加後に仮想マシンにリモートデスクトップ接続し追加ディスクのフォーマットを実施する必要があります。また、ディスクサイズを600GBとした場合、後述する構成サーバのセットアップ中に警告が表示されたため、警告を回避するためにはディスクサイズに若干余裕を持たせるべきであると考えられます。
5.Recovery Service コンテナーを作成します。作成時の各種パラメーターは以下としました。
・名前:RSC
・リソースグループ:RSC-RG
・場所:東アジア
2.構成サーバーのセットアップ
ASRを使用してサーバーを移行する際に必要となる構成サーバーのセットアップ手順を以下に示します。
上述の通り本検証では物理サーバー相当のAzure仮想マシンを移行対象サーバーと同一の仮想ネットワークに用意しセットアップを進めます。
1.「1.移行元環境構成」の5.で作成したRecovery Service コンテナーを開きます。
2.「Site Recovery インフラストラクチャ―」を開きます。
3.「VMWAREと物理マシン」の「Configuration Servers」を開きます。
4.「+サーバー」を押下します。
5.「サーバーの種類」で「物理の構成サーバー」を選択します。
※ 今回の検証の範囲外ではありますが、移行元がVMWare環境の場合には「WMWareの構成サーバー」を選択します。
6.「Microsoft Azure Site Recovery Unified Setup」のダウンロードを押下します。
7.「コンテナの登録キーをダウンロードします」のダウンロードを押下します。
8.構成サーバー用に用意したAzure仮想マシンにリモートデスクトップ接続し、「6」と「7」でダウンロードしたインストーラーと登録キーをコピーします。
9.「6」でダウンロードした「MicrosoftAzureSiteRecoveryUnifiedSetup」を実行します。
※構成サーバーの言語は英語である必要があります。本検証ではオンプレミス相当のサーバーにAzure仮想マシンを使用しており、Azure仮想マシンの既定の言語は英語であるため気にする必要はありませんが、実際の物理サーバーの場合は注意が必要です。
10.「Run」を押下します。
11.「Install the configuration server and process server」をチェックし、「Next」を押下します。
12.「Third-Party Software License」をチェックし、「Next」を押下します。
13.「Browse」を押下し、「6-7」でダウンロードした登録キーのファイルを選択し、「Next」を押下します。
14.本検証ではProxy Serverは使用しないため、「Connect with custom proxy setting」をチェックし、「Next」を押下します。
15.前提条件の確認が終了したら「Next」を押下します。
※ 検証時には警告が2件表示されました。1点目のディスクサイズについては600GBから1TBに拡張することで回避できました。600GBは前提条件の下限であるため多少余裕を持たせた方が良いようです。2点目の静的IPアドレスについては、本検証ではAzure仮想マシンを使用しており回避できないためそのままとしました。実際に物理サーバーを用意した場合にはIPアドレスを静的とすることが可能なので問題無いと考えられます。
16.任意のパスワードを入力し、「Next」を押下します。
17.「No」をチェックし、「Next」を押下します。
18.「Install Location」で追加ディスク(600GB以上)を選択し、「Next」を押下します。
19.「Next」を押下します。
20.「Install」を押下します。
21.しばらくするとインストールが完了します。「Finish」を押下します。
22.再起動を促す警告が表示されます。「OK」を押下します。
23.パスフレーズが表示されます。「Yes」を押下することでclipboardにコピーされるので必要な場合はコピーし控えておきます。本検証では不要です。
24.「Add Account」を押下します。
25.移行対象サーバーの管理者アカウントを入力し、「OK」を押下します。
※Friendly nameについてはAzureポータルで表示される名前なので任意で問題ありませんが移行対象サーバーの管理者アカウントであることが分かるようにしておく必要があります。
26.「OK」を押下します。
27.アカウントが追加されたことを確認し、「Close」を押下します。
28.構成サーバーを再起動します。
29.Azureポータルの設定画面に戻ると、「構成サーバー」が追加されていることを確認できます。
3.移行先環境構成
続いて移行先環境の構成手順を以下に示します。具体的には移行先のAzure仮想ネットワークとストレージアカウントを作成します。
1.サーバー移行先のAzure仮想ネットワークを作成します。作成時の各種パラメーターは以下としました。
・仮想ネットワーク名:Target-NW
・アドレス空間:192.168.0.0/16
・リソースグループ:Target-RG
・場所:東アジア
・サブネット名:default
・サブネットアドレス空間:192.168.1.0/24
※その他のパラメーターは全て既定値を使用
2.移行後のAzure仮想マシンで使用するストレージアカウントを作成します。作成時の各種パラメーターは以下としました。
・リソースグループ:Target-RG
・ストレージアカウント名:targetstorage
・場所:東アジア
・パフォーマンス:Standard
・アカウントの種類:Storage(汎用v1)
・レプリケーション:ローカル冗長ストレージ(LRS)
※その他のパラメーターは全て既定値を使用
4.ASR設定① レプリケーションポリシーの作成
ASRを使用して物理サーバーをAzureへ移行するためのレプリケーションポリシーを作成します。ここで作成したポリシーに基づいて物理サーバーのデータがASRへ複製されます。
1.Recovery Service コンテナーを開き、「Site Recovery インフラストラクチャ」を押下します。
2.「レプリケーションポリシー」を選択し、「+レプリケーションポリシー」を押下します。
3.ポリシーを作成します。各種パラメーターは以下の通りとしました。
・名前:Policy01
・ソースの種類:vmware/物理マシン
・ターゲットの種類:Azure
※その他のパラメーターは全て既定値を使用
4.ポリシーが作成されたことを確認します。
※フェールバック用のポリシーも同時に作成されるので2つのポリシーが作成されます。
5.ASR設定② インフラストラクチャの準備
今まで作成してきた移行元環境と移行先環境をASRで指定することで、移行のための準備を整えます。
1.Recovery Service コンテナーを開き、「Site Recovery 」を押下します。
2.「インフラストラクチャの準備」を押下します。
3.以下の通り設定し、「OK」を押下します。
・マシンのある場所:オンプレミス
・マシンをどこにレプリケートしますか?:Azureへ
・マシンは仮想化されていますか?:非仮想化/その他
4.「後で実行する」を選択し、「OK」を押下します。
5.「Configuration Server」に「2.構成サーバーのセットアップ」で設定した構成サーバを選択し、「OK」を押下します。
6.「OK」を押下します。
※「3.移行先環境構成」を実施していない場合はこの画面からストレージアカウントと仮想ネットワークを作成することも可能です。
7.「4.ASR設定① レプリケーションポリシーの作成」で作成したレプリケーションポリシーを選択し、「関連付け」を押下します。
8.「OK」を押下します。
9.「OK」を押下します。
10.「OK」を押下します。
6.ASR設定③ レプリケート設定
本手順では移行対象サーバーを指定しレプリケートを開始するための設定を行います。
1.Recovery Service コンテナーを開き、「レプリケートされたアイテム」を押下します。
2.「+レプリケート」を押下します。
3.以下の通り設定し、「OK」を押下します。
・ソース:オンプレミス
・ソースの場所:ConfigurationSV
・マシンの種類:物理マシン
・プロセスサーバー:ConfigurationSV
4.以下の通り設定し、「OK」を押下します。
・フェールオーバー後のリソースグループ:Target-RG
・フェールオーバー後のデプロイモデル:リソースマネージャー
・ストレージアカウント:targetstorage
・Azure仮想ネットワーク:Target-NW
・サブネット:default
5.「+物理マシン」を押下します。
6.移行対象サーバーの名前、IPアドレスを入力し、OSの種類を選択し、「OK」を押下します。
7.物理マシンが追加されたことを確認し、「OK」を押下します。
8.移行対象サーバーの管理者アカウントを選択し、「OK」をクリックします。
※「2.構成サーバーのセットアップ 27」で作成したアカウントのみ選択可能なので、該当するアカウントが存在しない場合は、Configuration サーバーで事前に作成する必要があります。
9.「レプリケーションポリシー」を選択し、「OK」を押下します。
10.「レプリケーションを有効にする」を押下します。
11.初期レプリケーションが開始します。
12.しばらくすると、「状態」が「保護済み」に変化します。
以上で、移行に必要な準備が完了しました。
長くなってしまいましたので実際の移行の様子については次回としたいと思います。