はじめに
この記事ではFinOps運用が組織に対してどの程度浸透しているかを測る指標である、成熟度モデルの解説、また、成熟度の段階に応じたAzure環境での具体例も踏まえ解説します。
FinOpsはあくまで組織内での意識や運用によって実現されるため、FinOps導入に対する組織の進捗度合いは表現しにくく、共通認識も持ちにくいでしょう。そこで、FinOps Foundationが提唱する浸透の指標を利用することで、自社での進捗の計画策定、社内外への報告に役に立つでしょう。
なお、FinOpsの過去の記事を基に基礎や関連知識を理解したい方は以下記事をご参照ください。
・AzureにおけるFinOpsへの取り組み【2023年版】
成熟度モデルとは
FinOpsの成熟度モデルとは、企業がFinOpsの導入進捗を評価するための3段階で構成されている指標です。初期の段階がCrawl(這う)レベル、次がWalk(歩く)レベル、最後がRun(走る)レベルで、後者程FinOpsが浸透している段階となります。
Crawlレベル
この段階では、企業はクラウドの利用に関するコストとリソースの基本的な理解を確立しようとしている状況です。Crawlレベルを経ることで、企業はクラウドの利用状況に関する基本的な洞察を得ることができ、次の段階である「Walk」段階に進む基盤を築くことができます。
Walkレベル
この段階では、企業はコストの最適化と予測に焦点を当て、より洗練されたアプローチを取るようになります。企業は単にコストを理解するだけでなく、積極的に最適化と予測に取り組むことで、より効果的なクラウドリソースの利用を実現し、経済的な利益を追求することができます。Walkレベルが充足したら、次の段階である「Run」への移行を目指します。
Runレベル
Run段階では、企業はより高度な自動化と効率化を導入し、継続的な最適化を図ります。企業はFinOpsの原則を深化させ、自動化と透明性によりリアルタイムなコスト管理が可能となります。これにより、迅速で柔軟な意思決定が可能になり、組織全体でのクラウドリソースの最適な利用が実現されることになります。
成熟度が3段階で示される
このように成熟度が向上するにつれて、企業はコストの透明性と効率を向上させ、ビジネスの成果を最適化できFinOpsの恩恵を受けられるようになります。
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各段階におけるAzureでの状況
以下に成熟度モデルの各段階におけるAzureの利用状況例を記載します。
FinOps の成熟度レベル | Azure環境における状況 |
Crawl(這う) | ・Azureの各種リソースの内50%以上が、リソースグループやタグによって所有する部門が明確化されている ・予約機能(リザーブドインスタンス等)を利用できるリソースの内、60%以上が割引を適用できている ・月初時点で予測される月額費用が、月が締まった時の実際の金額との差異が20%以内である |
Walk(歩く) | ・Cost Managementで月額コストの確認や、コスト異常が検知でき、一部の異常に対処できる ・Azureの各種リソースの内80%以上が、リソースグループやタグによって所有する部門が明確化されている ・予約機能(リザーブドインスタンス等)を利用できるリソースの内、70%以上が割引を適用できている ・月初時点で予測される月額費用が、月が締まった時の実際の金額との差異が15%以内である |
Run(走る) | ・Cost Managementで月額コストの確認や、コスト異常が検知でき、コスト異常に幅広く対処できる ・Azureの各種リソースの内90%以上が、リソースグループやタグによって所有する部門が明確化されている ・予約機能(リザーブドインスタンス等)を利用できるリソースの内、80%以上が割引を適用できている ・月初時点で予測される月額費用が、月が締まった時の実際の金額との差異が12%以内である |
組織はどこを目指していくべきか
ここまで紹介した通り、FinOpsの効果は基本的にはCrawl→Walk→Runに推移することで高くなります。では、組織は常にRunレベルを目指して活動すべきでしょうか。答えはNoです。Walkレベルにおいても、コストの異常検出は機能するため、ビジネス上の価値はあると言えますし、レベルを向上させるには単純な作業をすればいいわけではなく、組織の運用や意識を変える必要もあり、大きなコストを要したり性急に動くと組織間のハレーションも起きかねません。FinOpsの目的はあくまで”ビジネス価値の最大化”ですので、レベルを上げることを優先し、ビジネス価値を阻害しないよう気を付けましょう。
終わりに
今回は成熟度モデルについて紹介しました。この情報はFinOpsを進めるにあたり物差しとなる計画・管理に非常に有効な知見のため、定期的に確認し自社のFinOps推進に役立ててください。
なお、この情報はFinOps Certified Practitioner試験でも頻出の領域でもありますので、試験を受けられる方は必ずチェックするようにしましょう。
詳細は以下FinOps FoundationのWebサイトにも掲載されていますので是非こちらもご確認ください。
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