この記事は更新から24ヶ月以上経過しているため、最新の情報を別途確認することを推奨いたします。
追記:2021/3/26
FSLogixの保存先としてStorage AccountのBlobを採用することはできる限り避けてください。Blob Storageの処理性能がボトルネックとなり、FSLogixが正常に動作しない場合がございます。
Windows Virtual Desktop(以下、WVD)では FSLogix を利用してユーザープロファイル管理を行うことでハイパフォーマンスかつ Office アプリケーションにも最適な動作が期待できます。
一方、保存先のストレージによってコストやパフォーマンスが異なり、多くの選択肢がある中で何を選べばいいか悩まれることも多いでしょう。この記事ではコストを重視した観点では何を選択するのがベストかわかるように比較したいと思います。
比較対象
- Blob(HDD)
- Blob(SSD) P4
- Blob(SSD) P10
- VM/ファイルサーバー(SSD)
- Azure NetApp Files(Standard)
- Azure NetApp Files(Ultra)
他にも選択肢はありますが、AD DS のみで構成可能なものとして上記を比較いたします。
料金比較
前提条件
- 一人あたりの容量は FSLogix の既定値の 30 GB
※実際の容量としては最適化されてもっと少なくなることが多いかと思いますが、公平に計算するためにすべて 1 ユーザーあたり30 GB で計算します。 - VM は最小限のインスタンスサイズおよび OS ディスク容量
- パフォーマンスの要素(現実的かどうか)は一切無視
- トランザクションなどの課金も考慮せず、容量に対する課金で比較
ユーザー数 | Blob(HDD) | Blob(SSD) P4 | Blob(SSD) P10 | VM(SSD) | Azure NetApp Files (Standard) | Azure NetApp Files (Ultra) |
50 | 7,560円 | 34,005円 | 126,952円 | 45,086円 | 81,154円 | 216,003円 |
100 | 15,120円 | 68,011円 | 253,904円 | 69,026円 | 81,154円 | 216,003円 |
200 | 30,240円 | 136,022円 | 507,808円 | 115,456円 | 121,731円 | 324,005円 |
500 | 75,600円 | 340,055円 | 1,269,520円 | 250,388円 | 304,328円 | 810,012円 |
1,000 | 151,200円 | 680,109円 | 2,539,040円 | 482,528円 | 608,656円 | 1,620,025円 |
5,000 | 756,000円 | 3,400,545円 | 12,695,200円 | 2,357,723円 | 3,043,280円 | 8,100,120円 |
10,000 | 1,512,000円 | 6,801,090円 | 25,390,400円 | 4,715,268円 | 6,086,560円 | 16,200,250円 |
それぞれのストレージの総評
Blob(HDD)
検証環境においては Blob(HDD) を利用することで最低限のコストで WVD を利用することが出来ます。ただし、IOPS やスループットの問題で許容可能な同時接続数は少なくサインインストームによって快適に利用できなくなることが予想されます。
Blob(SSD)
Blob(SSD) は Blob(HDD) より高いパフォーマンスが期待できる一方、既定では P10 のディスクが作られるためコストパフォーマンスが悪く、必要に応じて P4 に変更するスクリプトを実行する必要があります。
P10 のままだと、100 ユーザーでは最も高い構成と言えます。
VM(SSD)
VM(SSD) は一見コストパフォーマンスもよく見えますが、VM の運用管理が求められるため、管理体制によっては運用コストが高く付くことになるでしょう。バックアップや冗長化などを施すと実際のコストはもっと高くなります。
一方、今回は検証を行いませんでしたが、Ultra Disk は容量やパフォーマンスを柔軟に構成できるため、こちらも要件によっては適切な場合もあるでしょう。
Azure NetApp Files
100-200 ユーザーくらいであれば Azure NetApp Files(Standard) は比較的コストパフォーマンスも出てきます。Azure NetApp Files は容量とパフォーマンスも比例するため、日中帯に一時的に論理的な最大容量を増やすことでパフォーマンスを高めることも可能です。
Azure NetApp Files は、既定では内部的に 100 TB の容量が用意されており、論理的に何 TB を利用可能とするかによって料金に反映されます。100 TB 内での容量の変更はあくまで論理的な変更のため、数秒で反映されます。
ある程度のユーザー数までは Azure NetApp Files(Standard) でも対応可能かと思いますが、パフォーマンスの観点から Azure NetApp Files(Ultra) が必要になるポイントが発生するでしょう。これらは IOPS やスループットといったお客様の同時接続数などの利用状況次第で一概にも言えないため、PoC を通じて検証したり、運用中に柔軟に構成変更することをオススメいたします。
まとめ
FSLogix は複数のストレージを指定できるということで容易に後から切り替えることも可能です。(運用環境になると多少面倒かもしれませんが)
まずはコスト重視で利用して、必要なパフォーマンスを見ながら高価でハイパフォーマンスなストレージを選択いただくのも一つの方法かと思います。