MarkdownからHTMLへ、AIエージェント時代の出力フォーマット再考

こんにちは。NewIT部の齋藤です

Anthropicのエンジニア・Thariq Shihipar(@trq212) さんが2026年5月8日に公開した「The Unreasonable Effectiveness of HTML」という記事で、SNS上でも大きな議論を呼んだものです。読んでみて「たしかに」と思う部分と「それは言い過ぎでは」と思う部分があったので、自分なりの解釈も交えながらまとめてみます。

誰が書いた記事か

まず著者について触れておくと、Thariq さんはAnthropicの開発者で、Claude Codeを開発しているチームの方です。つまりAIエージェントについて外から論じている人ではなく、自分でClaude Codeを使い倒しながら日々開発している当事者が書いた記事です。それだけに「なぜHTMLなのか」という話に妙なリアリティがありました。

主張はシンプル。でも意外と挑発的

記事の主張を一言でまとめると、「AIエージェントが作る成果物のフォーマットを、Markdownではなくデフォルトでかつ出力はHTMLにすべきだ」ということです。

「Claudeが読めるあらゆる情報は、HTMLで効率よく表現できる」

これだけ聞くと「そんな極端な」と思いますが、Thariq さんはこの主張を「フォーマットの好みの話」としてではなく、Markdownを選んでいた前提条件そのものが変わったという話として展開しています。そこが面白いところです。

「100行のMarkdownは誰も読まない」という指摘が刺さった

Thariq さんが挙げる理由のなかで、個人的に一番「たしかに」と感じたのはこれです。Claude Codeで長い仕様書やプランを生成してもらっても、100行を超えてくると正直ちゃんと読んでいないことがある。それで「まあClaudeがうまくやってくれるだろう」と先に進んでしまう。

Thariq さん自身も同じことに気づいて、そこに問題意識を持ったと書いています。伝わらない形式で書かれた情報は、書かれていないのと同じです。

他にも理由はいくつかあります。Markdownがよく使われてきた理由の一つにトークン節約がありましたが、100万トークンのコンテキストウィンドウが現実になった今、HTMLの数百トークン増はほぼ誤差の範囲です。また、かつてはMarkdownを「手で編集しやすい」という理由で選ぶ場面も多かったですが、今はClaudeの出力を次のClaudeセッションにそのまま渡す中間ファイルとして使うことが増えていて、人間が手で編集する機会そのものが減っています。HTMLの追加コストが実質ゼロに近づいたいま、あえてMarkdownを選ぶ積極的な理由が薄れてきている——というのが彼の見立てです。

具体的にどう使うのか

記事では5つの活用場面が紹介されています。読んでいて「なるほど」と思ったものをいくつか紹介します。

仕様策定・探索では、複数の設計案を比較するときにHTMLのカードグリッドで並べると、Markdownの箇条書きを順番に読むより「どれを選ぶか」という判断が格段に速くなります。デザインの方向性やトレードオフが視覚的に一目でわかるからです。

コードレビューでは、差分を色分けしてインライン注釈をつけたHTMLをPRに添付することで、「どこが危険か」が一瞬でわかるようになります。Markdownのコードブロックだと、問題箇所を探すために全部読まないといけない。

個人的に面白いと思ったのがカスタム編集UIです。チケットの優先度整理をするとき、Markdownではテキストをカット&ペーストするしかありませんが、Claudeに使い捨てのKanbanボードをHTMLで生成させて、ドラッグで並び替えた後に「Markdownとしてコピー」ボタンを押すと結果がClaude Codeに戻せる——という使い方です。使い終わったら捨てるUIをその場で作る、という発想がAIエージェント時代らしいと感じました。

Thariqさんが言いたかった本質

記事の結論部分が最も印象的でした。

「本当の理由は、Claudeとのループにもっと深く入り込めると感じるから」

HTMLへの移行は、情報密度や共有のしやすさという話だけではありませんでした。視覚的に整理されたHTMLは読まれます。読まれるということは、人間がClaudeの判断プロセスを実質的にレビューし続けられるということです。これはフォーマットの話というより、AIと人間がどう協働するかという話だと彼は言っています。

「全部HTMLにすべき」は言い過ぎだと思う

Thariq さんはAnthropicの内部ユースケースを前提に書いています。私自身の感覚では「全部HTML」は少し言い過ぎで、使い分けが現実的な答えだと思っています。

ただ、彼が本当に問うているのはそこではないとも思っていて、「Markdownをデフォルトにしていた前提が変わっている。あなたは今も意識的に選んでいますか?」という問いかけだと解釈しています。それは刺さる問いです。

実際のところ、人間が読む・共有する成果物(仕様書・レビュー資料・プレゼン用まとめなど)はHTMLが向いていて、機械が読む・自分だけが使う中間物(AGENTS.md・次セッションへの引き継ぎファイル・Gitで管理するテキストなど)はMarkdownで十分というのが自分の整理です。

フォーマット早見表

ユースケース 推奨 理由
共有・レビュー用ドキュメントHTMLブラウザで即共有、可読性が高い
コードレビュー資料HTML色分けdiffはMarkdownでは実現できない
設計・仕様書(100行超)HTML最後まで読まれる確率が上がる
インタラクティブプロトタイプHTMLスライダー等はHTMLでしか実現できない
AGENTS.md / SKILL.mdMarkdownClaudeが読む指示ファイルはMarkdownが適切
次セッションへの中間ファイルMarkdown機械が読むならMarkdownで十分
Git管理テキストMarkdown差分が読みやすくバージョン管理と相性良い
短いメモ(〜30行)どちらでも規模が小さければ差は出にくい

おわりに

「デフォルトのMarkdown」を使い続けることを、今まであまり疑っていませんでした。でもこの記事を読んで、少なくとも「誰が読むのか」を意識するようにはなりました。人間に見せる成果物はHTML、機械に渡す中間物はMarkdown——まずこの軸で選び直してみることから始めてみようと思っています。

もし弊社にご興味いただけましたら、お気軽にお問合せいただけますと幸いです


参考:The Unreasonable Effectiveness of HTML — Thariq Shihipar(2026.05.08)

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