FinOps 6つの原則を理解する

 

はじめに

過去の記事ではFinOpsとAzureの取り組みや概要を紹介してきましたが、この記事ではFinOps運用の指針となる6つの原則を紹介していきます。
FinOpsにおいてはFinops Foundationによって定められた6つの掟があり、この内容を理解し準ずることでFinOpsをブレずに実現し、効果を最大化することが可能です。では以下に各原則と、各原則に準じた場合のAzure運用例を合わせて解説していきます。
まずはFinOpsの基礎を理解したい方は以下記事をご参照ください。

FinOpsの基礎、メリット・デメリットを紹介

AzureにおけるFinOpsへの取り組み【2023年版】

 

原則①チームは協力する必要がある

FinOpsの運用はエンジニアリング部門だけでなく、財務部門、経営部門、プロダクト部門など多くの組織を横断して行われます。運用において各部門での情報提供やレポート作成等、タスクが分かれていたとしても、目的は同じビジネス価値の最大化です。
そのため各部門の利益を優先したり、情報確認範囲に差をつけず、各チームで相互に協力し合い、リアルタイムに同じ情報を確認可能とし、効率的に各チームで同じ品質のインプットができるようにしましょう。

Azure技術面での例

・各種Azureリソースへの閲覧権限を関係者全体に付与する
・Teams等により関係者全体が閲覧できるコミュニケーション領域を作成し、誰もが意見発信/受信できる環境を構築する

 

 

原則②意思決定はクラウドのビジネス価値に基づいて行われます

この原則はクラウド環境での費用管理とリソース最適化は、単なるコスト削減だけでなく、ビジネスの価値や目標に焦点を当てる必要がある事を指しています。
具体的には特定のリソースを増強することでビジネスプロセスの向上や収益増加が期待される場合、それに見合ったクラウドリソースの利用を検討する必要があるでしょう。リソースの増減だけでなく、クラウドリソースを地域やサービスに戦略的に配置してビジネス目標の達成度を高めることも選択肢として有効です。なお、リソースの最適化では、必要な機能や性能を確保しつつ、無駄なコストを削減することで最終的なビジネス価値を最大化します。
上記のような対応により、クラウド活用がビジネス全体に与える影響を最大化し、組織の目標達成を実現します。

Azure技術面での例

・ビジネス価値を「ユーザビリティ≒Webサービスの応答速度」と定義し、ユーザビリティ向上のためにCPU性能やリソース数を決定
・ビジネス価値を最終的な利益と定義し、VMの性能サイズを低下させ、クラウドコストを圧縮し利益を創出する

 

 

原則③誰もが自分のクラウド使用の所有権を取得します

この原則は、クラウドリソースの責任と所有権を各チームやプロジェクトに分散させ、各チームが各自のクラウド利用に責任を持つことを指しています。これにより、各所有者はコストへの理解を高め、クラウドリソースを最適化し、ビジネス全体に対する価値を最大化することを狙いとしています。
例えば、情報システム部門が他部門が使うシステムの管理及びそれに伴うコスト責任を持つのではなく、情報システム部門は自部門で使う分のみを管理し、開発部門が検証環境などが必要であれば開発部門自身で管理、コスト責任を負う形となります。この運用を実際に行うと、現場でのコスト意識の情勢、コスト削減に大きな効果があります。所有権と責任を担わせることは非常に重要なのです。

Azure技術面での例

・各部門に構築権限を有し、AzurePolicyでリソース構築時に各部門のタグの付与を強制したうえで、
 Azure利用料の請求はタグの部門単位で配賦し、各費用は社内で各部門の原価として計上する形とする

 

 

原則④レポートはアクセス可能でタイムリーでなければなりません

この原則は、クラウドコストとリソースの管理において、情報の透明性とリアルタイムな分析が必要であることを指しています。レポートへのアクセス可能性が保たれることで、組織内の様々な関係者が容易に情報にアクセスでき、コストや利用状況に対する理解が促進されます。
また、リアルタイムなレポートは変化する状況に対応し、即座に問題を検出し解決するための基盤となります。これにより、組織は迅速な意思決定ができ、コスト最適化やビジネスの最適化に向けた効果的な戦略をスピーディに展開できるようになります。

Azure技術面での例

・CostManagementへの閲覧権限を関係者全体に付与する
・CostManagement コストアラート機能の配信先を関係者全体に設定する
・CostManagementのデータを基にPowerBIレポートを日次で自動作成し、関係者全体でアクセス可能とする

 

 

原則⑤集中化されたチームが FinOps を推進します

この原則では、クラウドコスト管理を効果的に行うために、組織内に専門のFinOpsチームを設置するアプローチを指します。
原則③で、「各部門でクラウドは利用可能でありコスト責任も有する」とありましたが、それとは別に「FinOps運用を推進する中央化チームを設置すること」を推奨しており、やや混同しがちなので注意が必要です。
このチームはクラウドリソースの使用状況やコストに関する専門知識を有し、組織全体でのコスト効率やビジネス価値の最大化を促進します。チームが集中化されることで、クラウドの複雑な料金体系や最適化手法に対する統一的なアプローチが可能になり、組織全体で一貫性のあるFinOpsプラクティスを実現でき、これにより、コストの透明性が向上し、意思決定が迅速かつ効果的に行われ、クラウドの利用がより効率的になります。

Azure技術面での例

・Azure CostManagementやリザーブドインスタンス使用率を分析してコスト最適化を検討できるエンジニアをFinOps中央チームに配置する
・FinOps中央チームで各部門のAzureリソースを閲覧可能とする

 

 

原則⑥クラウドの変動コスト モデルを活用します

この原則は他の原則に対し具体的な技術内容にフォーカスした内容です。この原則では、クラウドサービスの利用において変動するコスト構造を理解し、効果的な管理を推奨しており、変動するクラウドリソースの料金体系や使用状況に注目し、リアルタイムなデータを活用してコストを最適化します。
社内では柔軟にリソースをスケーリングしたり、リザーブドインスタンスの利用などでコストを最小化する戦略を立て、ビジネス価値の最大化が期待されます。変動するクラウドコストに対する適応力を持つことで、組織は迅速に変化する要求やトラフィックに対応し、コスト管理を効果的に行うことが可能です。

Azure技術面での例

・必要な性能が変動するWebAppsリソースをオートスケーリングで自動で性能変動させる
・利用する時間が限定的な仮想マシンをAutomationを用い自動起動/停止させる
・長期的に稼働する必要がない仮想マシンをSpot VMで構築する

 

 

終わりに

今回は6つの原則を紹介してきました。この情報はFinOps運用の大原則であり指針の為、運用方法に迷ったりした場合はこの原則に立ち返り、判断を下したり、絶えずこの原則を守れているか、運用ルールのチェックにも使うとよいでしょう。
なお、この原則はFinOps Certified Practitioner試験でも頻出の領域でもありますので、試験を受けられる方は必ずチェックするようにしましょう。

詳細は以下FinOps FoundationのWebサイトにも掲載されていますので是非こちらもご確認ください。

FinOps Principles

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