財務観点で見るオンプレミス/クラウドシステム導入の影響

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■はじめに

皆さんこんにちは。
この記事ではシステムをオンプレミス基盤、クラウド基盤それぞれで導入した場合の財務観点への影響を書いてみたいと思います。

お客様への提案や自社への導入の際に、別観点の影響を把握することで他社、他部門との認識合わせの促進・円滑化に寄与できればと思います。
なお、今回記載の内容は財務会計の知識の超初歩的な内容なので専門外の方も気軽に見てもらえればと思います。

 

 

■財務観点とは?

そもそも財務観点とは何でしょう。
財務観点とは企業の資産・負債や売上・利益の状況がどう変化するか、と言う観点です。
この観点では、単に売上が大きければいい、負債が少なければいい、と言うわけではなくあらゆる性質から良し悪しを判断をします。
この記事では大きく3つの性質から変化を読み解きます。
 -収益性:企業がどれだけ利益を生み出すか、という性質
 -効率性:企業がどれだけ効率的に投資した資本から利益を生み出すか、という性質
 -安全性:企業の資産がどれだけ安全に運用されているか、という性質

 

 

■購買設定

今回は1000万円で購入したオンプレミス機器を耐用年数5年の減価償却で処理する場合と、
年間200万円が発生するクラウドシステムを5年間使用した場合の影響を見ていきたいと思います。
法人税率は40%とし、機器やクラウドの導入費などの作業費用については今回は考慮しません。
5年の合計費用はどちらも1000万ですが、財務観点ではどのような影響があるのでしょうか。

 

 

■変動要素

上記の購買を行った場合、財務状況にどのような影響があるかは、貸借対照表、損益計算書の指標の変化から確認できます。
そのために、上記購買時の各指標の変動を見ていきましょう。

 

【貸借対照表(B/S)】

指標 オンプレミス クラウド
固定資産 +1000万 0
減価償却累計額 +200万 0

【損益計算書(P/L)】

指標 オンプレミス クラウド
販管費 0 +200万
減価償却費 +200万 0

【その他】

指標 オンプレミス クラウド
営業CF +80万 0

 

 

■オンプレミスの影響

・収益性:やや向上
営業キャッシュフローは減価償却が発生することから節税効果により増加します。
収益性と言う特性の部分では一概に良化ではないですが、利益が増加するという意味ではプラスの影響があります。
※営業キャッシュフロー…本業で得た現金・預金の流れ及び指標

・効率性:低下
オンプレミスの場合システム資産を有することになるため、固定資産が増加します。
効率性の面では有形固定資産回転率が低下するため、効率性は低下すると考えられます。
※有形固定資産…企業の資産規模に対しどの程度売上を得ているかの指標

・安全性:低下
システムを資産として計上するため、固定資産が増え、固定比率が増加し、安全性は低下すると考えられます。
なお、営業キャッシュフローが増加する為現金・預金が増加し、流動比率が増加する、こともあるかと思いますが、
節税効果による利益増のため、一旦今回は考慮外とします。
※固定比率…固定資産が自己資本と比較してどの程度賄えているか、長期的な安全性を示す指標

 

 

■クラウドの影響

・収益性:低下
クラウドを導入した場合、クラウド利用料が費用として計上されるため、B/Sへの影響は少ないですが、
販管費として利用料が計上されるため、売上高営業利益率及び営業利益が減少し、収益性としては低下する形となります。
※売上高営業利益率…売上高に対しどの程度利益を得たかという指標

・効率性:変化なし
効率性においてはクラウド導入による変動要素は少ないと考えられます。

・安全性:やや低下
クラウド利用料が費用として計上され、営業利益及び現金・預金の減少から、流動比率の低下し、安全性が低下します。
ただし、現金預金の変動額は財務・投資のキャッシュフローも考慮されるため影響は限定的と考えられます。
※流動比率…流動的(直ぐに現金に換えられる)資産と負債のバランスを見る、短期的な安全性を示す指標

 

 

■まとめ

これらをシンプルにまとめると以下となります。
オンプレミスを選ぶ場合、移行の財務諸表は効率性と安全性に低下の傾向、クラウドを選ぶ場合、収益性が低下の傾向がある。
これは資産を購入して目的を実現するより月額利用料などのサブスクリプションサービスを利用する場合の影響とも類似します。

 

 

■終わりに

あくまで今回は各システムの導入時の費用を考慮していないですし、システム導入に伴う売上高への影響やランニング費用の変動についても加味していない為、限定的な効果でしかありません。
とはいえ、考慮要素の一部ではあり、システム規模が大きくなるほどこの効果は更に顕著になります。
エンジニアとして財務の変動は全くの専門外ですが、他の領域を表面的にだけでもさらっておくと何かの役に立つかとは思うので、是非覚えてもらえると幸いです。

 

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